プレシャスハンター
放課後……下校中……。
「もう出てきていいぞー」
「あー! 息苦しかったー!」
「ずっと僕のカバンの中にいたからな」
「というか、あなたの妹、変」
「夏樹のどこが変なんだ?」
「昼休みにあなたのいる教室にやってきてあなたにおんぶさせたり、あなたにお弁当を口移しで食べさせようとしたり、あなたの陰口を言っている男子生徒を殺気で失神させたり……とにかく変、全部変」
「誰が変だって?」
「うわあ! 出たー!」
「何か問題ある?」
「い、いえ、何も……」
「そう。それで? あんたはいつこの町からいなくなるの?」
「……しばらくここにいようと思う」
「はぁ?」
「私を欲しがってる人たちは世界中にたくさんいる。でも、この町にはそんなにいない。だから」
「つまり、この町は他の町より安全そうだからしばらくこの町で暮らしたいってことでしょ」
「うん」
「はぁ……じゃあ、うち来る?」
「え?」
「あんたみたいな得体の知れないやつを見返りなしで泊めてくれるところがあると思う?」
「空き家なら泊めてくれる」
「まあ、そうね。でも、あんたのことを知った人間は遅かれ早かれあんたを狙うようになる……だから、あんたはずっと逃げ続けてる。同じ場所にいたら争奪戦が始まるから」
「なんでそんなこと分かるの?」
「私もあんたみたいに逃げてた時期があったからって言ったら信じる?」
「うーん、まあ、高校生なのに体が貧相だから……あっ」
「今夜のデザート、何にしようかなー」
「ご、ごめんなさい! ちっちゃくてかわいいです! だから、食べないでー!!」
「食べないわよ。まずそうだから」
「そ、そんなことない! 私はおいしい! 多分」
「はいはい」
「ごめん、二人とも。ちょっと寄り道していくから先に帰っててくれ」
「はーい」
「え? あー、うん、分かった。でも、まな板と二人きりだとちょっと不安」
「あぁん?」
「ちっちゃくてかわいい夏樹さんと一緒に帰れて嬉しいです!」
「よろしい。お兄ちゃん、帰ったら一緒にお風呂入ろう」
「ああ、分かった」
「うん、じゃあ、また後でね」
「ああ」
「ねえ、もしかして彼はこれから彼女のところに行くのかな?」
「リンゴジュースっておいしいわよねー」
「ご、ごめんなさい! 今のは独り言です! なので忘れてください!」
「はいはい」
……さてと。
「なあ、小僧。お前、幻の果実を独り占めしようとしてないか?」
「あなたのような人がいるからあいつはずっと一人なんですよ」
「なんだと? お前、俺たちが悪者だって言いたいのか?」
「違うんですか?」
「ああ! 違うね! 俺たちはプレシャスハンターだ! 総員、かかれー!!」
『わー!』
僕は僕の目の前にいるリーダーと物陰に潜んでいたやつらをどこかの星にあるそこそこ危険な砂漠に移動させた。
「プレシャスハンターか。うーん……よし、潰そう」
「……た、大変だ! このことを早くボスに伝えないと!!」
よし、尾行しよう。




