水族館と脱走と例の粉
ある日、この町にある水族館にいる全ての生き物が脱走した。原因は水槽の水にいつのまにか混ざっていた『どこでも泳げるようになる粉』だ。空中だろうと地中だろうと宇宙だろうと太陽の中だろうと関係ない。粉の効果が切れるまでスイスイと遊泳できるのだ。
「ブレイン、お前の仕業じゃないだろうな?」
「お兄ちゃん、私の発明品は私とお兄ちゃん以外使えないよ。それに私は許可なく外出できないから犯人じゃないよ」
「だよな。よし、じゃあ捕獲対象を空中に集めた後、捕獲結界で閉じ込めるか。夏樹」
「なあに?」
「魚たちを空中に誘導してくれないか?」
「分かった!」
「ねえねえ、お姉ちゃん。どうやって誘導するのー?」
「ブレイン、覚えておきなさい。こういう時は私の髪で捕獲対象を全部捕まえた後、お兄ちゃんの捕獲結界の中に放り込むのよ」
「そんなことできるのー? というか、お姉ちゃんの髪ってどこまで伸びるのー?」
「どこまでも伸びるわよ」
「へえ、そうなんだー。すごいねー」
「まあね。じゃあ、いってきまーす」
「おう、気をつけるんだぞー」
「はーい」
「ねえねえ、私も手伝わせてー」
「ブレイン、お前は家で待機だ」
「えー」
「と言いたいところだが、お前に捕獲結界を作れる装置を作ってもらいたいから僕のそばで見学してくれ」
「はーい!」
数十分後、僕たちは捕獲対象全て捕獲した後、水族館まで運んだ。例の粉の正体はどこからか侵入した新種の蝶の鱗粉だった。僕はその蝶が悪用されないように別世界にある『自然溢れる平和な星』に送った。
「お兄ちゃん、できたよー。捕獲結界作れる装置」
「そうか。できたか。じゃあ、何かあったらそれでみんなを守ってくれ」
「うん!」




