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食いついた!

 鬼姫ききはニコニコ笑っている。

 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は今にも彼女に襲いかかりそうだ。


「ねえ、鬼姫ききちゃん。どうして私の邪魔をするの?」


「昔は珍しくもなかったんだけどね、今はちょっと難しいのよ。恋愛って、時代によって変化するところとそうじゃない部分があるの。だから、雅人こいつのことは諦めた方がいいわよ」


 夏樹なつきは殺意に満ち溢れた瞳で彼女を睨みつけると、黒い長髪で彼女を拘束しようとした。


夏樹なつきちゃんは、それしかできないの?」


 鬼姫ききは手刀で彼女の髪を受け流しながら、前に進み始めた。


「なっ……! こ、このっ……!」


 夏樹なつきは黒い長髪で彼女を拘束しようとするが、まるで夏樹なつきの心が読まれているかのようにロックオンできない。


「ほらほらー、どこ狙ってるのー? あたしはここよー」


「み、身軽すぎる……! こんなのいくらやったって」


 鬼姫きき夏樹なつきの背後に回ると、耳元でこうささやいた。


「実はね……やろうと思えば、あなたのお兄ちゃんの体をいつでも乗っ取れるのよ。でも、あたしはそれをしていない。なぜだか分かる?」


「う、うるさい! 黙れ! 今すぐ、お兄ちゃんの体から出ていけ! この人殺し!」


 夏樹なつきが彼女の顔面を殴ろうとすると、彼女は夏樹なつきの拳を片手で受け止めた。


「人殺しねー。まあ、間違ってはいないけど、あなたもそうなる可能性があるのよ?」


「そ、そんなことない! 私はお兄ちゃんがいてくれれば、他には何もいらない! だから、私はあなたみたいなことはしない!」


 鬼姫ききは彼女の手首を掴むと、ぐいと引き寄せた。


「じゃあ、そのお兄ちゃんがいなくなったら、どうするの? 自分の命より大切な存在がいなくなったら、あなたはどうするの? 一人で生きていけるの?」


「そ、それは……」


 彼女が目を逸らすと、鬼姫ききは彼女のあごに手をかけた。


「何か言いたいことがあるなら、あたしの目を見て言いなさいよ」


「お、お兄ちゃんの体を使って、そういうこと言わないで」


 何? この

 もしかして、迫られると興奮するの?


「なあにー? よく聞こえなーい。今、なんて言ったのー? ねえねえ」


「う、うるさい! その体はあなたのものじゃないんだから、早くお兄ちゃんに返してよ!」


 返す? もう八割くらい、あたしのものだってことを知らないの? まあ、いいか。

 彼女は夏樹なつきを解放すると、こう言った。


「返してあげてもいいけど、実の兄妹が恋人みたいなことするのを見てると、ぐしゃぐしゃにしたくなるから程々にしなさいよ?」


「ほ、程々って、どれくらいならいいの?」


 は? いや、それは自分で……うーん、それが分からないから苦労してるってことは、なんとなく分かるんだけどねー。

 まあ、少しくらい教えてあげましょうかね。


「えーっと、口にするキスと性行為はしちゃダメってことは分かる?」


「どうしてダメなの? どっちも好きっていう気持ちを確かめ合うためにするものじゃないの?」


 それは……まあ、そうなんだけど。


「別にやってもいいけど、もしも子どもができたらどうするの?」


 夏樹なつきは頬を赤く染めながら、こう答える。


「た、大切に育てる」


「え? あー、ちょっと待って。あなた、本当にただのブラコンなだけなの?」


 もしそうなら、なんとかなるかもしれない。


「え、えっと、お兄ちゃんのことは大好きだし、お兄ちゃんとの間にできた子どもなら、大切に育てるつもりだけど……」


「あー、はい、ストップ! ストップ! えっと、じゃあ、こうしましょう。あなたはこれから恋愛について学んでいく。そして、それが本当に恋心なのかどうか分かるまで、雅人こいつに手は出さない」


 さて、どうかな?


「わ、分かった。やってみる」


 食いついた! はぁー、良かった。

 これでしばらくはおとなしくしてくれそうね。

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