黒いカバン
なんだろう? あれ。カバンかな? 公園のベンチの上に黒いカバンが置いてある。誰のだろう……交番に届けた方がいいのかな? 私がその場でどうしようか考えているとカバンが勝手に開き、中から黒い腕が飛び出した。
「きゃあ!!」
黒い手は私の手首を掴むと黒いカバンの中に引きずり込もうとする。
「だ、誰か! 誰か助けてー!!」
「おーい、その人はターゲットじゃないぞー。さっさとその手を離せ」
「はーい」
「え? え? 何? どういうこと?」
「えっとですねー、このへんによく現れる怪盗ブラックという黒いものだけを盗んでいく怪盗を捕まえるためにカバンの付喪神に協力してもらってるんですよ。でも、なかなか引っかからないんですよねー」
「そ、そうなんですか。じゃあ、私はこれで」
「待ってください。あなた、影がありませんよ」
「え? 嘘!? うわあ! 盗まれたー!!」
「大丈夫です。人間の闇に頼んで探させますから」
「は、はぁ」
数分後、怪盗ブラックはあっさり捕まった。空き地の土管の中で寝ていたから捕まえるのは簡単だった。まあ、捕まえたのは私を助けてくれた彼だが。
「よかったですね、影が戻ってきて」
「いやあ、一時はどうなるかと思いましたがなんとかなってよかったですー」
「ですね。じゃあ、僕はこれで」
「はーい」




