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自暴自棄

 家に帰ると、夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は『はぐれ死神』を解放した。


「どうして家に帰るまで髪をほどいてくれなかったの?」


「え? そんなのあなたがお兄ちゃんを殺そうとしたからに決まってるでしょ?」


 夏樹なつき雅人まさとのとなりで彼女にそう言った。


「そ、それはまあ、そうだけど……」


「ねえ、お兄ちゃん。この人、今日の晩ごはんにしようよ」


 我が妹よ、そんな残酷なことを軽々しく言うものじゃないぞ?


「そこまでする必要はないよ。それにほら、彼女はあんなにおびえてるよ」


「こ、この私が、おおお、おびえるわけ」


 彼が一歩前に進むと、彼女は玄関のすみまで行った。


「そんなに怖がる必要はないよ。別に今日の晩ごはんにしようだなんて、これっぽっちも考えてないんだから」


「……本当?」


 彼女は涙目になっている。

 まあ、初対面の相手に今日の晩ごはんにしてやるなんて言われたら、逃げ出したくなるよな。


「ああ、本当だよ」


「……そう」


 彼女はくつを脱ぐと「お、お邪魔します」と言った。


「えっと、まあ、とりあえず色々教えてくれないかな? 僕を殺そうとしたこととか、何で鬼姫ききを知っているのかとか」


「わ、分かりました。ちゃんと説明します。ですから、乱暴なことはしないでください」


 なんか公園で座敷童子と戦ってた時と性格が違うような……気のせいかな?


「そんなことしないよ。僕を何だと思ってるの?」


 彼は彼女の手をつかむと、リビングまで連れていった。


「私、お兄ちゃんの右側ー」


「では、私は左側に座ります」


 夏樹なつきと座敷童子は僕がソファに座ると、そんなことを言いながらスッと座った。


「じゃあ、私はダーリンの膝の上ー」


 白猫はそう言いながら、僕の膝の上に飛び乗った。

 白猫は僕の膝の上で体を丸めると、スウスウと寝息を立て始めた。

 え? もしかして、寝たのか?

 まあ、別にいいけど。


「……あ、あの……私はどこに座れば……」


「あー、まあ、楽な姿勢でいいから、マットの上に座ってくれると嬉しいな」


 彼女は恐る恐るマットの上に立つと、ゆっくりと腰を下ろした。

 なぜに正座なんだ?

 まあ、いいか。


「えっと、とりあえず名前を教えてくれないかな?」


「あっ、はい……。『リリナ・デスサイス』です」


 リリナか……。

 うん、可愛らしい名前だな。


「分かった。じゃあ、リリナ。どうして僕を殺そうとしたんだ?」


「えっと……その……昔、鬼姫ききちゃんと遊んだことがあってですね。でも、なんか封印されちゃったみたいで、最近まで行方が分からなくて……」


 彼女の話を要約すると、行方不明だった友人と会って、また遊んでもらいたいという思いが強すぎて、僕を殺そうとしてしまった……である。


「なるほどな。気持ちは分からなくもないけど、色々すっ飛ばしてるぞ」


「ご、ごめんなさい。私、情緒不安定でいつも学校のみんなから避けられてて、それから……」


 自暴自棄じぼうじきになってるな。


「リリナ。あんまり自分を悪く言うな。あと、今にも泣きそうな顔になってるぞ」


「あっ、はい。ごめんなさい」


 すぐ謝るなよ。


「……えーっと、つまり、僕は鬼姫ききの精神と入れ替わって、リリナは鬼姫ききと遊べば万事解決ってことかな?」


「えっと、まあ、そうですね」


 本当かな?

 なんかまだ隠してそうだな。


童子わらこ。すまないが……」


「分かりました」


 まだ何も言ってないんですが。

 座敷童子はスッと立ち上がると、リリナの前でかがんだ。


「え、えっと、何をするつもりですか?」


「大丈夫です。少し素直になってもらうだけですから」


 座敷童子はニッコリ笑うと、彼女のひたいに人差し指で『暴露』と書いた。

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