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散歩

 週末。

 僕は座敷童子と夏樹なつきと白猫と一緒に近所を散歩することになった。

 白猫は外では普通の猫のフリをしている。

 しゃべる猫がいてもおかしくない世界ではあるが、普通の猫のフリをしていた方が散歩に集中できる。

 夏樹なつきは後頭部の口が見えないように外では髪を動かさないようにしている。

 風で揺れるのは仕方ないが、自由自在に動かしていたら目立ってしまう。

 それをなんとも思わないものもいるが、不快に思うものもいる。

 座敷童子は子どものように、はしゃいでいる。

 低身長なのに、真顔で大人びたことを言うとおかしな子だと思われるからだ。

 まあ、みんな僕の前では普通にしているんだけど。


「お兄ちゃん! お兄ちゃん! てんとう虫がいるよ!」


「ああ、そうだな。けど、あんまり刺激するなよ? 黄色い汁出すから」


 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)は手の平にてんとう虫を乗せると、指の先端に向かって登っていく姿が面白いのかニコニコ笑い始めた。


「たまには、こういうのもいいかもな」


「これからは、こういう日が続きます。ですから、あなたはもう余計なことに首を突っ込まないようにしてくださいね?」


 自分から、そうしているわけじゃないんだけどな。

 まあ、そういうことに巻き込まれやすいのは事実だけど。


「ダーリン。抱っこして」


「おう、いいぞ」


 僕が少しかがむと、白猫は僕の胸の中に飛び込んだ。


「よしよし」


「にゃー♡」


 僕が優しく白猫の頭を撫でてやると、彼女は気持ち良さそうな声を出した。

 そういえば、こいつの名前、なんていうんだろう。


「良かったのか? こんな近所の公園で」


「デートというのは場所ではなく、誰とするのかが問題なんです。好きでもない人としたって楽しくありません」


 そういうもの、なのかな?

 座敷童子は足元に生えているシロツメクサを見ている。


「それに、公園でのんびり過ごすのも悪くはありません」


「そうだな。悪くはないな……」


 僕の体は脳と見た目以外、鬼になっている。

 これ以上、鬼化すれば僕は人ではなく、完全に鬼になってしまう。

 それを食い止める唯一の方法。

 それは……人間らしく生きる……ということである。

 今まで通りに生活していればいいのかと思うかもしれないが、トラブルに巻き込まれた際は抵抗せず相手の好きにさせる。

 鬼の力は一切使わない。

 まあ、無意識に使っているようなものだから、普通の人間が僕を殴ったり、蹴ったりしたら、骨が折れる。

 確実に折れる。

 それほどまでに、僕の体は頑丈になってしまった。


「お兄ちゃーん! こっち来てー! なんか変なのいるー!」


「変なのって……。はいはい、分かったよ。今、行くよー」


 彼が夏樹なつきの元に歩み寄ろうとすると、そいつは突如として彼らの前に現れた。

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