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一度会ってお話ししてみたいです

 放課後、僕が視聴覚室に行くと『美山みやま 黒百合くろゆり』(僕のクラスの担任)がいた。


「よかった。来てくれたんですね」


「先生に呼ばれましたからね」


「そうでしたね。それじゃあ、二者面談を始めましょうか」


「二者面談ですか……」


「はい、そうです。まあ、主に私があなたに相談するんですけどね」


「なるほど」


 僕たちは向かい合って椅子に座る。うーん、やっぱり成人女性には見えないな。小学校低学年か幼稚園児にしか見えない。


「はぁ……」


「大きなため息ですね」


「だってー、やっとこの宇宙に来られたのにこわーい人たちにずーっと監視されてるんですよ? ため息の一つや二つしてないと頭がおかしくなりますよー」


「僕も先生と似たような状態ですが親族や知人以外だと見られたくないですよね」


「え? え? あなたもずーっと監視されてるんですか?」


「ええ、まあ」


「そうなんですかー。そっかー、私だけじゃないんだ」


「はい、そうです。それで? 僕に相談したいことというのは何なんですが?」


「それはですねー。私を守ってくれている存在についてです」


「気づいていたんですか」


「こわーい人たちの視線が常に私の背後に向けられていますからね、気づかない方が難しいです」


「そうですか。それで? 先生はそれをどうしたいんですか?」


「そうですねー。一度会ってお話ししてみたいです」


「僕にそんなことできると思います?」


「できます」


「理由は?」


「別の宇宙、つまり私の出身地にあなたの母親がやってきてあなたにならそれができると断言したからです」


 余計なことを……。というか、あんたがやれよ。でも、もし僕が鬼の力くらいしか使えない時期に先生が僕に同じことを言っていたら僕はちゃんと先生の願いを叶えられたのかな? うーん、まあ、できそうだな。鬼姫ききならできる。言霊の力でなんとかなる。


「そうですか。ということは先生は僕と会う前から僕のことを母から色々聞かされていたんですね?」


「いえ、名前しか聞かされていません。あー、あと会えば分かると言っていました」


 母さん……。


「そうですか。なんというかすごく申し訳ないです」


「どうしてですか?」


「え? いや、だって、名前だけ分かっても同姓同名の人多分何人かいるでしょう? それに別の宇宙の人となると探すのはかなり困難ですよ」


「あっ、それはお母様がわざと住民票を落としていったので分かりました」


 母さん……。


「そうですか。えっと、母がいつ来たのか分かりますか?」


「えーっと、私の配属先が全然決まらなくて困っていた時に現れました」


「女神様じゃないですか」


「はい、女神様です」


「そうですかー。で、僕のいる宇宙に行こうとしたら宇宙バリアとかに妨害されたんですね」


「はい。なんというかサービスエリアに行くと身体検査しないとここから先一歩も進めませんみたいなことがこの宇宙に来るまでありました」


「そういうのは空港でやるものじゃないんですか?」


「私の場合は空港以外でもやらないとダメなんですよ」


「そうなんですか。でも、それはあなたに危害を加えようとするものにしか反応しませんよ」


「やはりそうでしたか。はぁ……。でも、まあ、こうしてあなたと出会えたのでよかったです!」


「そうですか。えっと、じゃあ、そろそろ始めましょうか」


「え? 今からですか?」


「あっ、別に明日でもいいですよ」


「えー、あー、うーん、じゃあ、今からでいいです」


「分かりました。あっ、声だけ聞こえるようにしますか? それとも」


「直接会ってお話ししたいです」


「分かりました。では、始めます」


「よろしくお願いします」


「はい。じゃあ、『可視化』」


 僕は文字の力で先生の守護霊を可視化した。すると先生の守護霊は部屋の隅っこに行き、体を丸めた。どうやら主人に自分の醜い姿を見せたくないらしい。


「先生、アレの容姿はかなりきついです。それでも直接会ってお話ししたいですか?」


「はい、したいです」


「そうですか。では、今からアレがいる場所まで案内します」


「よろしくお願いします」

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