お兄ちゃん、今日一日ゆっくり休んでね
あったかい……。僕はこのぬくもりをよく知っている。
「おはよう、お兄ちゃん」
「……夏樹」
うーん『ホープシャイン』を使った後の記憶が曖昧だな。
「どれくらい寝てた?」
「半日くらいだと思うよ」
「そうか……。今何時だ?」
「お兄ちゃん、今日は休日だから私とのんびり過ごそう」
「それは……できない」
「どうして?」
「僕が家事をやらないとみんな困るだろ?」
「お兄ちゃんはみんなのこと赤ちゃんか何かだと思ってるの?」
「違うのか?」
「あのね、お兄ちゃん。人も妖怪も成長するんだよ。だから、一日ぐらい家事をみんなにやらせてもいいんだよ。お兄ちゃんはいつも頑張ってるんだから」
「でも、今も世界のどこかで泣いてる人や妖怪がいる可能性が」
「お兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「頑張りすぎるといつか倒れるよ」
「大丈夫。こう見えて僕は丈夫だから倒れないよ」
「お兄ちゃんはいつも他人のことばっかり考えてるよね」
「え? あー、まあ、そうだな」
「それはすっごくいいと思うけど、お兄ちゃんが倒れたら困る人がたくさんいるんだよ? だから、今日は私とお布団でのんびりしようよ」
「お前の部屋にいつまでもいるわけにはいかない」
「いつまでもいていいよ」
「僕が休んでる間に今もどこかで事件が」
「それは私たちで解決するからお兄ちゃんは休んでていいよ」
「でも……」
「お兄ちゃん」
「は、はい」
「お願いだから私のそばにいて。遠くに行こうとしないで」
「……夏樹」
「お兄ちゃん、今日は私の部屋で……いっぱいイチャイチャしよ♡」
「そんなことしたら僕の汗や皮脂で夏樹のベッドが今以上に汚れるぞ」
「私はそんなの気にしないよ」
「で、でも……」
「お兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「おやすみー」
「お、お前……! いつのまに鬼姫の言霊の力を……!!」
「私は生まれる前からお兄ちゃんのこと見てるんだから、これくらいできて当然だよ。よしよし、いい子いい子」
私はお兄ちゃんが遠くに行かないようにギュッと抱きしめる。それでも不安だから髪で拘束する。それでもまだ不安だから部屋に特殊な結界をたくさん張る。
「お兄ちゃん、今日一日ゆっくり休んでね」
「……うん」
「そう、たまにはゆっくりしていいんだよ。人生は長いんだから休める時に休まなきゃ」
私はお兄ちゃんが目を覚ますまでずっととなりにいた。世界で何が起きていようと私たちには関係ない。たまには自分たちでなんとかしてほしい。お兄ちゃんはあなたたちの神様じゃなくて私のお兄ちゃんなんだから。ねえ? お兄ちゃん。




