婆娑婆娑
婆娑婆娑。見た目はヒクイドリにニワトリのトサカがついたようなもので大きな翼をバサバサと羽ばたかせながらたまに火を吐く妖怪。火は幻なので燃えない。人に危害を加えることはなく、虫や小動物を食べる。たまに動物園にいる。
「あっ、婆娑婆娑だ」
「ホントだ! でも、少し大きいニワトリにしか見えないね」
「そうだな」
「ギエー」
「鳴き声あんまりかわいくないね」
「夏樹、本音をすぐ口にするのは控えた方がいいよ」
「はーい。というか、なんで動物園にいるの?」
「目がそんなによくないからたまに他の鳥を仲間だと勘違いしちゃうからだよ」
「そっかー。頭はダチョウ程度なんだね」
「うーん、どうなんだろう。そもそも脳があるのかどうか分からないからなー」
「ギエー」
「お腹空いてるのかな?」
「さぁ?」
「お兄ちゃん、この子の言葉翻訳できる?」
「実は動物園に来た時から翻訳機能オンにしてるからさっきのと今の言葉の意味分かるぞ」
「え? そうなの? やったー! それで? なんて言ってたの?」
「最初のが今日もいい天気ー! で今さっきのが頭かゆいー! だ」
「うわあ、どうでもいい」
「まあ、そうだな」
「ギエー!!」
「今のは?」
「えーっと、雨降りそうー! だって」
「こんなに晴れてるのに?」
「目が悪いから白い雲と黒い雲の判別ができないんだよ」
「どうして目が悪いの?」
「天敵がいないからだよ」
「え? いないの?」
「うん。だって、こいつが見えるのは自分に危害を加えない者だけなんだから」
「そっかー。でも、この子はそのこと知らないんだろうなー」
「正解」
「だよねー」
「ギエー!!」
「今のは?」
「イチャイチャするなー! だってさ」
「へえ、そういうのは分かるんだ」
「男女が仲良くしてることくらいはさすがに分かってるみたいだな」
「へえ、そうなんだ。あっ、もう閉園の時間だ。じゃあね、婆娑婆娑。また会おうねー」
「ギエー!」
「またなー! 乳臭いガキー!! だってさ」
「焼き鳥にしてあげようか?」
「ギ、ギエー!」
「ご、ごめんなさーい! だってさ」
「次はないからね」
「ギェ……」
「はい。だってさ」
「よろしい。じゃあ、帰ろっか」
「ああ」




