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狸囃子
狸囃子が聞こえる。追いかけても音は遠ざかるし音の正体を探ってもそこには何の形跡もないしそもそも音だけの怪異だから実体があるのかすら怪しい。だから、虫の音だと思って家でのんびりしているのが一番だ。
「お昼のニュースです。昨夜十時頃、田んぼに車が何台も突っ込みました。幸いなことに運転手や乗車していた人たちは全員軽傷でした。しかし、全員狸囃子を追いかけていたらいつのまにか田んぼの中にいたなどと意味不明な供述しており」
「バカな人たち」
「夏樹、人のこと言えるのか?」
「昔はみんなやるけど、大人になってから引っかかるのはダサいよー」
「夜は暗いからな、ついつい音に敏感になっちゃうんだよ」
「そうなのかなー?」
「そうだよ。よし、じゃあ、さっさと食べて草むしりするか」
「うん!!」




