金目の金目鯛
金目の金目鯛を捕まえてとある研究所に届けると百兆円もらえるらしい。しかし、それは海にはいない。それは夜の森で暮らしている。
「あっ、金目の金目鯛だ」
「み、見つかっちゃった! 逃げろー!」
「待って。僕は君を助けに来たんだ」
「そうなの?」
「ああ、そうだよ。えーっと、とりあえずうちまで来てもらえないかな? もうすぐ人間たちがここにやってくるから」
「あなたは人間じゃないの?」
「体は人間だけど本体は人間じゃないよ。うーん、これだと分かりにくいな。星の王と言えば分かるかな?」
「あー! 星の王か! それならそうと早く言ってくれればいいのに」
星の王の知名度すごいな。
「ごめんごめん。じゃあ、行こうか」
「うん!」
どうやら金目の金目鯛はとある研究所で生み出された生き物らしい。空中を泳ぎながら周囲の光を体内に取り込み、それを常時目から出しているから金目に見える。海底や宇宙での探索が主な任務だそうなのだがこの個体はそれが嫌で逃げ出してきたらしい。まあ、自由時間や休日が一切ないらしいから逃げ出したくなる気持ちはよく分かる。
「でも、何も言わずに脱走するのはよくないと思うぞ」
「だよねー。じゃあ、今から電話するよ」
「いいのか? 多分君はこれからずっと働かされるぞ」
「そのへんは交渉してなんとかするよ。向こうはやろうと思えば巨大化して地球を噛み砕けること知ってるからね」
「そうか。じゃあ、もう寝ていいかな?」
「うん、いいよ。おやすみ」
「ありがとう。じゃあ、おやすみ」
次の日の朝、金目の金目鯛はうちに住むことになった。理由は研究所にいるはずの金目鯛たちが昨日全員脱走したからだそうだ。近々他の金目鯛もうちに来るそうなので彼らの部屋を作る必要がある。入居日(明日か明後日)までに作れるかな? まあ、なんとかなるだろう。
「えーっと、僕は入居日に宇宙のどこかにいる金目鯛たちを迎えに行けばいいのかな?」
「うん」
「えーっと、みんな一箇所にまとまってるのかな?」
「ううん、全員違う場所にいるよ」
「そうか。分かった。じゃあ、当日までに分身を少し増やしておくね」
「よろしくー」
リビングにあるソファの上で家出中の白猫がよだれを垂らしている。おいおい……。




