ほしがりさん
ほしがりさんに物を与えていいのは三回まで。もしその約束を破ったらあなたはきっと後悔する。
「ちょうだーい、ちょうだーい」
うーん、どこかで聞いたようなセリフが聞こえるなー。たしかとある妖怪の口癖だったような気がする。誰だっけ? あっ! 思い出した! ほしがりさんだ!!
「やぁ、ほしがりさん。ん? 何それ」
「人間からもらったのー。ドーナツ? っていうんだってー」
「ほしがりさん、それはドーナツじゃなくてガムテープだよ」
「え? そうなの? じゃあ、食べられないの?」
「普通の人は食べないけど、ほしがりさんなら食べられるよ」
「そうなんだー。じゃあ、いただきまーす!! あーむっ! あむあむあむ……うん! おいしい! 星の王も食べる?」
「いや、いいよ。それはほしがりさんのものだから」
「分かったー。んー! おいしい!! もう一つもらってくるー!!」
「分かった。車に気をつけるんだぞ」
「うん!!」
うーん、なんか嫌な予感がするな。ちょっとついていってみるか。
*
彼女は今、ゴミ捨て場でゴミを漁っている男性に話しかけている。よし、一応、彼女の母親に電話しておこう。
「人間! それ、ちょうだーい」
「え? あー、君はさっきの。よおし、じゃあ、君にはこの箱をあげよう」
「んー? これ、なあに?」
「ダンボ……いや、これはお菓子でできている箱だよー」
「そうなの? でも、この箱、なんかお菓子っぽくないよー」
「そんなことないよ。さぁ、お食べ」
「わーい! ありがとう! あーむっ! あむあむあむ……うん! おいしい!!」
「え?」
「ねえねえ、他にも何かちょうだーい」
「そ、そうだな。じゃあ、これなんかどうだい?」
「これ、なあに?」
「ペットボトルだよ」
「ペットボトル? それ、おいしいの?」
「ああ、おいしいよ。はい、どうぞ」
「わーい! ありがとう! あーむっ! あむあむあむ……うん! おいしい!」
「では、私はこれで」
「待って! もっとちょうだーい」
「君は欲しがりさんですねー。じゃあ、そこにあるもの全部あなたにあげます」
「わーい! やったー! じゃあ、ついでにあなたの命もちょうだーい」
「……え?」
「ん? どうしたの? 早く私の栄養になってよ」
美幼女が突如サメのような容姿になる。そう、ほしがりさんは人間に擬態しているサメの妖怪なのである。
「ひ、ひえー! ば、化け物ー!!」
「逃げるな! お前の命を私に捧げろ!!」
「ひ、ひえー! だ、誰か助けてー!!」
「ほしがりさーん、お母さんが呼んでるよー」
「はーい!! あっ! 星の王だ! どうしてここにいるの?」
「君のお母さんに頼まれたからだよ」
「そっかー! それで? お母さんなんて?」
「もうすぐおやつだから早く帰ってきなさいだって」
「分かった! じゃあね、人間。命拾いしたね」
あーらら、失禁してるよ。あっ、気絶した。
「ほしがりさん、早く家に帰ろう」
「はーい!!」




