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私とテンジとおじいちゃん

 八丈島……。


「テンジよー、テンジはおるかー?」


「じっちゃん! じっちゃん!」


「おー、テンジ。久しぶりじゃなー」


「久しぶり! 久しぶり!」


「テンジよ、今日はわしの孫を連れてきたぞ」


「……こんにちは」


「こんにちは! こんにちは!」


「孫の八重やえじゃ。かわいいじゃろう」


「かわいい! かわいい!」


「声が大きい。静かにして」


八重やえ! 仲良くしてね!」


「私、男の子苦手だから無理」


「テンジはテンジだから男の子でも女の子でもない!」


「え? そうなの?」


「テンジは『天』と『地』に愛されている妖怪じゃからのー。性別はないんじゃよ」


「そうなんだ。なら、仲良くできそう」


八重やえ! 遊ぼう! 遊ぼう!」


「え? あー、うん」


「ヒャッ! ヒャッ! 遊ぼう! 遊ぼう!」


 テンジよ、あとのことは頼んだぞ。

 それから数日後、嵐が島を襲った。それはほとんどの島民や家屋を海まで吹き飛ばしながら島の作物をダメにしていった。嵐はもうすぐ止むそうだが島の外から船が来るまで残された者たちはどうにかして生き延びなければならない。


「ねえ、テンジ。私たち死ぬのかな?」


「死なない! テンジがなんとかする!」


「なんとかって……洞窟の外は危ないよ」


八重やえはここにいて」


「嫌だよ……私、あなたを……私のたった一人の友達を失いたくない! お願い! テンジ! 私を一人にしないで!!」


「大丈夫! テンジは妖怪だから死なない! じゃあ、いってくる!」


「待ってよ! テンジ! テンジー!!」


 それから数時間後、テンジは島民たちに食べ物を分け与えた。どうやらそれは私のおじいちゃんが地下に備蓄していたものらしい。


八重やえ! はい! どうぞ!!」


「ありがとう。それから、おかえり」


「ただいま! ただいま!」


 テンジは「ヒャッ! ヒャッ!」と笑いながら嵐が止むまで私のそばにいてくれた。

 それから数日後、ようやく船が来た。でも、この島に残っている人たちで島を復興するのは無理だ。ねえ、おじいちゃん。私たちこれからどうすればいいのかな?


八重やえ! この島はテンジが元気にする!!」


「え? そんなことできるの?」


「多分できる!!」


「多分って……。じゃあ、もしテンジがこの島を元気にしたらテンジはどうなるの?」


「……分からない。でも、多分大丈夫! テンジは妖怪だから!!」


「テンジ一人が頑張る必要ないよ! 私たちみんなで島が元気になるようにするから。ね?」


「分かった! みんなで島を元気にしよう!!」


『おー!!』


 おじいちゃん、みんなのおかげで島はすっかり元気になったよ。ねえ、おじいちゃん。今、どこで何してるの? テンジも会いたがってるよ。


「……宅配便でーす」


「はーい!!」


「ただいま、八重やえ


「お、おじいちゃん!?」


「じっちゃん! じっちゃん!」


「おー、テンジも元気そうじゃのー」


「ね、ねえ、おじいちゃん。どうやって生き延びたの?」


「通りすがりの高校生に助けられたんじゃよ。嵐に吹き飛ばされた島民全員な」


「え? どういうこと?」


「星の王! 星の王!」


「え? 何? それ。もしかして宅配便さんのこと?」


「そうそう、この少年が助けてくれたんじゃよ」


「そ、そうなんだ」


「いやあ、少年の島での生活は楽しかったのー」


「え? そうなの? というか、その人島持ってるの?」


「ああ、そうじゃよ。まあ、でも、やっぱりこの島が一番居心地いいからのー。みーんな帰ってきたんじゃよ」


「そっか。みんな帰ってきたんだ」


「めでたし! めでたし!」


「そうだね……って、あれ? 宅配便さんは?」


「帰った! 帰った!」


「えー、帰っちゃったのー? まだお礼してないのにー」


「大丈夫じゃよ。生きていればきっとまた会える」


「そうかなー」


「大丈夫! 大丈夫!」


「テンジはいつもポジティブだねー」


「ポジティブ! ポジティブ!」


八重やえ、そろそろメシにしよう」


「あっ、うん、分かった。テンジ、手伝って」


「分かった! 分かった!」

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