怪人パズル男と私とお兄ちゃん
いい! 実にいい!! あれこそ僕が探し求めていた理想の足だ!! よおし……!!
「ねえねえ、そこの美人のお姉さん。これから僕と飲みに行きませんか?」
「えー、どうしようかなー」
「返事をしてくれてありがとう! そのパーツ、いただき!!」
「キャー!!」
「よおし! これであとは髪だけだー!! では、さらばだ!!」
怪人パズル男。昼夜問わず返事をした相手の体の一部分をパズルにして奪ってしまう神出鬼没の変態野郎。パーツを奪われた女性たちに外傷はないが少なからず生きづらくなってしまった。
「あとは髪だけ……あとは髪だけ……。はっ! あ、あれは!」
やっと……やっと出会えた!! あの小学生(?)の黒い長髪があれば僕の理想の彼女が完成する!! よおし……!!
「そこのお嬢ちゃん、ちょっといいかな?」
「お兄ちゃーん! 助けてー!!」
「……え?」
「僕の妹に近づくな……。八つ裂きにするぞ?」
「お、お前! どこから現れた!? じゃなくて、ば、バラバラになれ!!」
「『反射結界』
「あっ……ああ……僕の体がパズルになっていく。おい! お前! 今の技はなんだ! 僕に何をした!!」
「お前の能力をお前に跳ね返しただけだ」
「そっかー。上には上がいるなー」
その日、怪人パズル男は逮捕された。彼のアジトには奪われたパーツが揃っており、それらは女性警察官たちによって回収された。
「ねえ、お兄ちゃん。私の髪って理想の髪なのかな?」
「何言ってるんだ? お前の体は全部理想のパーツでできてるじゃないか」
「お兄ちゃんは正直だねー。よしよし」
「髪で頭を撫でるのか」
「だって、手が届かないんだもん」
「そうか。じゃあ、少し屈むか」
「ありがとう、お兄ちゃん。よしよし」
「……なあ、夏樹」
「なあに?」
「僕はお前のお兄ちゃん……でいいんだよな?」
「お兄ちゃんは生まれる前に死んでるけど、あなたが……『希望のかけら』さんがお兄ちゃんの体に入ってくれたおかげでお兄ちゃんの体は今もこうして動いている。だから、あなたも私のお兄ちゃんだよ」
「それは二人で一人のお兄ちゃん……ってことかな?」
「え? あー、まあ、そうなるかなー。さぁ、早く帰ろう! 私、おなか空いちゃった!!」
「ああ、そうだな。じゃあ、帰ろうか、僕たちの家に」




