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アニメ映画

 夏樹なつき雅人まさとの実の妹)が作ったアニメ映画がやばかった。


「あー、えーっと……これ、ロトスコープだよな?」


「うん! そうだよー」


「うーんと、主人公が隕石に向かって飛んでいくシーンもそうなのか?」


「うん! そうだよー。髪で隕石を手繰り寄せるの結構大変だったよー」


「そうか。えっと、次は演出だな。どうしてたまに紙芝居になるんだ?」


「もうすぐそのキャラが死ぬからだよ」


「それは見てれば分かる。でも、それが終わると必ずグロシーンになるのはどうしてだ?」


「敵に殺されたからだよ」


「それは分かる。でも、そのシーンと紙芝居の間の動きがないのはどうしてだ?」


「それを描くと視聴者のトラウマになるからだよ」


夏樹なつき、お前の見せたいものはなんだ?」


「この世界は終わりのない悪夢だってことだよ」


「そうか。なら、描いていいと思うぞ」


「お兄ちゃんはグロいの好きなの?」


「いや、別に。ただお前が描きたいものを描き切ってほしいんだよ」


「そっか。じゃあ、グロシーン増やすね。他には?」


「音楽とかSEがシーンに合いすぎてて逆に怖い。これ、どうやって作ったんだ?」


「そんなのキャラクターや自然が教えてくれるよ」


「そうか。すごいな。えっと、あとは……キャラクターの色が派手だからなんか見てると目がチカチカするな。もう少し目に優しい色にしてくれ」


「分かった」


「あと、たまに誰がしゃべってるのか分からない時があるからカットイン演出みたいなやつでそうならないようにしてくれ」


「分かった」


「あと、ここの伏線回収し忘れてるから回収してくれ」


「それを回収すると次回作できなくなるよ」


「次回作って……もう世界に誰もいないじゃないか。どうするんだ? これ」


「今回は伏線を回収しなかった世界線だからね」


「そうか。なら、エンドロールでこの伏線を登場させよう」


「分かった」


「あと、戦闘シーンがたまに分かりにくいからどうにかして分かりやすくしてくれ」


「分かった」


「最後に……僕を勝手に声優デビューさせないでくれ」


「全部録音した音声だよ」


「役名があるキャラ五百人以上いるのに僕と夏樹なつき以外の声がないのは怖いから誰かに頼もう。な?」


「やだ」


「どうしてだ?」


「だって、そうしないとどのキャラのルートを選んでもお兄ちゃんと心中できなくなるもん」


「お前が本当にやりたかったことはそれかー!!」


「うん♡」

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