ブラック夏樹、現る
突如太陽付近に出現したブラック夏樹により宇宙は音を立てて壊れ始めた。どうやらこの世界にいるだけで宇宙を壊してしまうようだ。
「黒い夏樹ー! お前はどうしてこんなことをするんだー?」
「お兄ちゃん、どこにいるのー?」
「そうか。お前は別世界の僕を探しているんだな」
「お兄ちゃん、私を一人にしないでー」
「えーっと、別世界の僕が最後にお前と話したのはいつだ?」
「昨日」
「そうか。昨日か。それで? どんな話をしたんだ?」
「お兄ちゃん、お見合いするって言ってた」
「お見合い? そっちの僕は大人なのか?」
「ううん、高校二年生」
「なんだ、僕と同じじゃないか。それで? 誰とお見合いするって言ってたんだ?」
「幼馴染」
「ん? もしかして羅々か?」
「そう。あの百々目鬼女」
「あいつ、どの世界でも夏樹に嫌われてるなー。それで? なんで僕とあいつがお見合いすることになったんだ?」
「私があいつの家の監視カメラを全部壊したから」
全部かー。
「なんでそんなことしたんだ?」
「あいつがお兄ちゃんを自分の家に呼んで……」
「僕のあんな姿やこんな姿を撮影して販売しようとしたんだな?」
「うん」
「僕のファンクラブの会員を増やすためか?」
「うん。人気アイドルに負けてられないとかなんとか言ってた」
「そうか。ということは監視カメラの弁償代の代わりに僕と結婚すればチャラにしてくれるってことだな」
「うん」
「そうか。うーん、じゃあ、こうしよう。世界中にあるあいつの監視カメラを全部壊そう」
「そんなことしたらみんな困るよ」
「それが狙いだよ。もしそんなことになったらお見合いどころじゃないから」
「たしかに。じゃあ、壊すね」
「ちょっと待ったー!」
「お、お兄ちゃん! どうしてここにいるの?」
「あっ、別世界の僕だ。結婚おめでとう」
「いや、まだ結婚してないから。というか、今日はお見合いしかしてないから」
「そうか」
「ああ。それとお見合いは本題のおまけだ」
『本題?』
「ああ、そうだ。なんか新しい監視カメラを作りたいから協力してほしいんだってさ」
「そうなのかー。よかったな、別世界の夏樹」
「うん!」
「うちの夏樹が世話になったな。壊れた箇所は今から直すから許してくれ」
「一緒に直そう。その方が早く終わるから」
「そうだな。よし、じゃあ、夏樹は先に帰っててくれ」
「分かった」
「それじゃあ、直そうか」
「すまないな。本当なら僕一人で直すべきなのに」
「そんなの気にしなくていいよ。さぁ、早く宇宙を直そう」
「ああ、そうだな」




