金魚の女王
帰宅時、僕は白い金魚の固有空間に閉じ込められた。
「えーっと、君は僕に何をするつもりなんだ?」
「……ここで一生私と暮らしてほしい」
初対面の白い金魚にプロポーズされた。今のところ擬人化していないが、多分やろうと思えばできる。擬人化は固有空間作るよりハードル低いから。
「返事をする前に一つだけ質問させてくれ。君はただの白い金魚じゃないな。何者だ?」
「私は自然界に生息している名前のない金魚」
「んー? 自然界に金魚っていたっけ?」
「品種改良で生まれた金魚のルーツは私」
「そうか。じゃあ、君は金魚の女王なんだね」
「まあね」
「よし、じゃあ、僕はこれで」
「帰さない。あなたは一生ここで私と暮らすの」
「それ、僕じゃなくてもよくないか? この世にはたくさんの男性が」
「アレには興味ない。でも、希望のかけらであるあなたには興味がある」
「君ってもしかして絶望のかけらだったりする?」
「違うという証明はできないけど、あなたになら私の体を捌かれてもいい」
「そうか。でも、そんなことしなくても君から邪悪な気配は感じられないから絶望のかけらじゃないよ」
「そう」
「えっと、一生は無理だから休日とか暇な時とかでどうかな?」
「……私が透明化してあなたのそばにずっといていいのなら、あなたはここに来なくていい」
「そうか。じゃあ、そうしようか」
「うん」




