お守りの怪
とある神社でお守りを買ってから私の体はだんだんおかしくなっていった。
まずあらゆる痛みが小石に当たったくらいにしか感じなくなった。
次に舌がおかしくなった。例えば、私が白米を食べている時に食べたいと思う食べ物を思い浮かべると白米がその味になる。
その後、鼻がおかしくなった。いいにおいにだけ敏感に反応するようになった。それ以外はにおいの発生源しか分からない。
その後、耳がおかしくなった。自分が聞きたい音しか聞こえないため上司の怒鳴り声や不快なニュースの音声などは全て無音になる。
その後、目がおかしくなった。なんというか相手の考えていることや遠くものや物や人の中身や暗闇やすごく小さなものや未来が見えるようになった。
最後に……私は不老不死になった。実はお守りを買った日から予兆があった。珍しく包丁で少しだけ指を切った時、処置をする前に完治したからだ。私は健康になりたいからあのお守りを買った。でも、こんなの私は望んでいない。人類が絶滅しても私は絶対に生き残る。そんなの耐えられない。どこかにこの呪いを解ける人はいないのだろうか。
「おや? そのお守り、微調整されていませんね」
「え?」
夕方、私が道を歩いていると見知らぬ人にそう言われた。
「すみません。少しお借りしてもよろしいですか?」
「え? あー、はい、どうぞ」
「ありがとうございます。えーっと、ここをこうして、こうすれば……よし、できた。これであなたは一生そこそこ健康でいられますよ」
「あ、ありがとうございます! えっと、君、高校生?」
「はい、そうです。あっ、お礼は結構です。僕、百鬼部……ボランティア部に入ってるので」
「そう。でも、君すごいね。どうやったの?」
「それは秘密です。では、僕はこれで」
「あー、うん、バイバイ」
不思議な高校生だったなー。
わー、きれいな夕日。明日は晴れかな?




