ジンベイサマ
ジンベイサマ。宮城県金華山沖に出現するという伝承が残る海の怪。これが出るとカツオが大量に獲れるらしい。
「船長! やつが来ましたー!!」
「よおし、じゃあ、やつの子どもをデンキウナギの水槽の上で宙吊りにしろ」
「へい! 野郎ども! やれー!!」
『おー!!』
ドタバタ海賊団はジンベイサマの子どもを捕獲し、親をおびき寄せている。巨大なアームで持ち上げられた子どもは大泣きしながらジタバタ暴れている。
「ジンベイザメの王よ! 完全武装したうちのクルー百人と戦う勇気はあるか!!」
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「せ、船長! やつは船の下にいます!!」
「うろたえるな! 子どもがいる限り、やつは攻撃できない!」
「じゃあ、もし誰かが子どもを解放したらどうなる?」
「誰だ! 俺の船に勝手に乗るんじゃねえ!!」
「通りすがりの高校生だ」
「ふざけるな! 野郎ども! かかれー!!」
『おー!!』
「『強酸化』」
『ぎゃああああああああああああああああああああああ!!』
「こ、こいつ! 全身を強酸にしやがった!!」
「相手の攻撃は自分に当たる前になんとかすれば大抵どうにかなるんだよ」
「そうか。なら、これならどうだ!!」
ヒョウモンダコの毒が入っている弾丸をくらえば、こいつは確実に死ぬ!! そのあと、俺はジンベイサマを捕獲して食う! こいつのフカヒレは誰にも渡さねえ!!
僕は船長が引き金を引く前に改良したイモガイの毒を船長の心臓に注射した。
「うっ! お、お前! 俺の体に何をした!!」
「あの世に行けば教えてもらえるよ」
「ま、まだだ! 俺はまだ、死ぬわけにはいかな……い」
そうか。空間を繋げられるやつと戦ったことなかったのか。まあ、宇宙海賊でも能力者でもないからな……。こんなもんか。
「デンキウナギくん。君は故郷に帰してあげるよ。というか、ジンベイサマの子どもは自力でなんとかできてたよね?」
「ウン」
「ウンって……まあ、いいや」
僕はジンベイサマの子どもを解放すると海まで運んだ。
「もう捕まるんじゃないぞー」
「ハーイ」
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
えーっと、あとは。
「デンキウナギくん。その穴は君の故郷と繋がってるから寄り道せずにまっすぐ家に帰るんだよ」
「ワカッタ」
「おう。じゃ、元気でな」
「お兄ちゃーん! 迎えに来たよー!!」
「おー、夏樹か。ごめん、まだ船の掃除してないからそれが終わるまで家で待っててくれ」
「はーい!!」
さてと……どこから掃除しようかな。




