人類カニ化計画
一億年の時を超え、ついにやつが目を覚ます。
やつはとある国で見つかった琥珀の中にいた。研究チームがやつの姿を見た時、何度も目を疑った。これは! これは! カニだ! カニだ! そう、やつはカニだったのである。
「そうか……そういうことか」
「どういうことですか?」
「分からないかね? 全ての生命が目指すべき進化の最終形態はこれなんだよ! つまり! みんなカニになれば万事解決するのだー!!」
「よく気づいたな。その通りだ。カニ・ビーム!」
琥珀の中にいるカニはテレパシーで研究チーム全員の脳に直接語りかけている。
「おお! 私の体がカニになっていく! カーシニゼーション万歳! カニ最高! さぁ、みんなもカニになろう!!」
「じょ、冗談じゃない! カニになったらカニを食べられないじゃないか!!」
「お前はカニが好きなのか。ならば、お前は再生特化のカニにしてやる。そうすれば毎日食べ放題だ。カニ・ビーム!」
「うわああああああああ!!」
「や、やめて! 私、カニアレルギーなの!!」
「そうか。ならば、カニにするついでに治してやる。カニ・ビーム!」
「きゃああああああああ!!」
「カニ化かー。借金あるんだけどいいかな?」
「カニは一生無職だ」
「だよなー。よし、なるわ」
「分かった。カニ・ビーム!」
「ヒャッホー!!」
「ねえ、カニになったら結婚できると思う?」
「フェロモンを出せば、カニのオスがいくらでも寄ってくる」
「それ、いいわねー! 決めたわ! 私カニになる!」
「分かった。カニ・ビーム!」
「やったああああああああ!!」
よし、この調子で全生命をカニにしていこう。
「だが、私はまだ自由に動けない。なあ、元人類たち。人類をカニにしてきてくれないか? 仲間が増えればカニエナジーが私の元に集まるから」
「どうして人類をカニにするんだカニ?」
「人類は皆、心のどこかで救世主を求めているからなー、私がその救世主になれば人類は喜んでカニになってくれるはずだ」
「断られたらどうするんだカニ?」
「お試しで数分間カニにするのだ」
「それだけカニ?」
「ああ、それだけでいい。人間は楽をしたい生き物だからな。遅かれ早かれ人でいるよりカニになった方が楽だと気づくはずだ」
「なるほど! でも、それだと僕たちはカニ・ビームを二回出さないといけないカニ」
「お試しでカニになった生き物のデータは私の脳に送られてくる。私のビームはカニになりたい生き物がどこにいても届くからお前たちがビームを二回出す必要はない」
「分かったカニ! じゃあ、行ってくるカニ!」
「気をつけるんだぞー」
「はいカニー!!」
この日、やつは『全生命カニ化計画』を始動……させる前に『人類カニ化計画』を始動した。




