蛤女房がやってきた
休日、僕たちは潮干狩りをしに海辺にやってきた。
「あさりー、しじみー、はまぐりー、出てこーい!!」
「夏樹ー、海にいないの混ざってるぞー」
「あっ、ホントだ。じゃあ、イモガイ出てこーい!!」
「イモガイはちょっと……。あっ、蛤出てきた。うーん、でも、まだ成長の余地あるなー。もう少し大きくなりなー」
僕たちは夕方になるまで潮干狩りをしていた。帰ったら砂抜きしないといけないなー。
「帰ったぞー」
「おかえり! ダーリン!! んー? ダーリンの背後にいるのって誰?」
家出中の白猫が僕の背後を見ながらそう言う。
「え?」
「は、はわわわ! 見つかっちゃいました!!」
「迷子かな? よし、僕と一緒に交番に行こう」
「わ、私は迷子なんかじゃありません!!」
「じゃあ、何なんだ?」
「わ、私は蛤女房です!!」
蛤女房? どう見ても内気な幼女じゃないか。ん? 待てよ。
「あっ、もしかして今日僕が最初に見つけた蛤?」
「は、はい! そうです!!」
「そうか。で? 君は何しにここまでやってきたんだ?」
「そ、それは……あなたと結婚するためです!!」
「ねえ、お兄ちゃん……そいつ誰?」
「ひ、ひぇえええ! 鬼! 悪魔! 魑魅魍魎!!」
「いや、夏樹は僕の妹で二口女だよ」
「え? あー、そうなんですか。よかったー」
「よかった? ふん! バカなやつだ。お前はもうすぐ今日の晩ごはんになるというのに」
「え、えーっと、私は最初からそのつもりですよ」
「あぁん?」
「夏樹、ちょっと蛤女房について調べておいで」
「はーい♡」
「か、かわいらしい妹さんですね」
「だなー」
数分後、夏樹が戻ってきた。
「お前のことは理解した。さぁ、入れ」
「あ、ありがとうございます! お邪魔します!!」
「ありがとう、夏樹。さぁ、晩ごはんを作ろう」
「わ、私! 味噌汁作ります!!」
「分かった」
「じゃあ、私ごはん炊くー」
「夏樹ー、ちゃんと手を洗ってから研ぐんだぞー」
「はーい♡」
よし、じゃあ、砂抜きするか。




