文野 真字
僕が例の小学生と帰宅すると座敷童子の童子が瀕死状態の文字使いを庭に埋めていた。
「なあ、童子。そいつは例の文字使いか?」
「はい、そうです。彼は死神エックス、文字使いの中で一番バカで根性がある人物です」
「そうなのか。どうやって倒したんだ?」
「彼が文字の力を使う前に全身の骨を折りました」
「どうやって?」
「彼と接触する前に私の分身をたくさん作り、戦いが始まると同時に分身たちを彼の体にまとわりつかせ、自爆させた後分身たちに彼の骨を折らせました」
「その間お前は何をしていたんだ?」
「分身たちの強化をしていました」
「そうか。でも、そいつがお前の作戦に気づいていたらどうするつもりだったんだ?」
「彼と接触する前に私の周囲に『触ると無間地獄に行く結界』を張っておいたので分身たちが全て戦闘不能になっても私が負けることはありません」
「そうかー。ということは、そいつは戦う前から負けていたんだな」
「そうですね。さて、コレのことはほっといて、その娘の今後について話しましょうか」
「そうだな」
「ねえ、お兄さんは私の正体知ってるの?」
「知ってるよ」
「じゃあ、早く教えて」
「それは家に入ってから話すよ」
「分かった」
山本家……リビング……。
「君の正体は文字そのものだ」
「ん? どういうこと?」
「文字使いはこの世に存在している文字に込められている力を引き出して現実に影響を与えるけど、君は文字そのものだからコツさえ掴めば文字を書かなくても種族や場所、距離を問わずいつでも好きなだけ文字の力を使い放題なんだよ」
「えっと、つまり私は最強?」
「まあ、そうだね。あと文字使いの天敵かな」
「そうなの?」
「そうだよ。なあ? 童子」
「はい、そうです。どんな強力な文字を使ってもあなたには一切効きませんから」
「えっと、つまり、私は常に文字の力を無効化してるってこと?」
「うーん、ちょっと違うかなー。君の周囲には常に文字の力を弱体化させてはたき落としちゃう結界が張られているから君を文字の力でどうにかすることは不可能なんだよ」
「要するにあなたの周囲には常に文字の力限定の蚊帳があるんです」
「あー、ト○ロのアレね」
「そうそう。まあ、蚊帳よりかなり丈夫なんだけどね」
「そっかー。で? 私はこれからどうすればいいの?」
「僕はこの家で君を保護するつもりだけど、君が嫌なら断ってもいいよ」
「別に嫌じゃないよ」
「そうか。じゃあ、決まりだな。よし、今から君の家に行って荷物を」
「そういうのは両親にやらせるからいいよ」
「いや、両親がいきなり仕事場からいなくなるのはまずいから引っ越しは僕たちでやるよ」
「分かった。じゃあ、私も手伝う」
「ありがとう。じゃあ、始めるか」
「うん!!」
こうして『文野 真字』はうちで暮らすことになった。




