やめないよ
作戦開始。
「ニャー」
「あっ、猫だ」
「ニャー、ニャー」
「何? 私に何か用?」
「ニャー♡」
この猫、初対面なのに私に心を開いてくれてる。かわいい。よし、連れて帰ろう。私が白猫を抱き上げようとすると白猫が道路にゴロンと横になった。
「え、えっと……おなか撫でていい?」
「ニャー」
「ありがとう。じゃあ、遠慮なく。おー、思ったよりあったかくてふわふわしてる。ずっとこうしていたい」
よおし、これでしばらく足止めできるな。
「童子、文字使いは見つかったか?」
「たった今見つけました。これから倒しに行きます」
「そうか。無理するなよ」
「はい。止まりなさい、死神エックス」
「誰だー? 俺の名前を呼んだのはー」
「死神エックス、私のことを忘れたとは言わせませんよ」
「あー、なんだ、お前かー。生真面目な姉弟子、童子ー」
「やっと思い出しましたか。不出来な弟弟子」
「忘れるわけねえだろ。俺を毎日ボコボコにしてたやつの名前なんだからよー」
「そうですか。では、今からあなたをボコボコにします。昔のように」
「やれるもんならやってみろー!!」
童子、大丈夫かな……。いや、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。僕は夏樹たちが呪われた食材の呪いを解いてる間に彼女を説得してこれ以上事態が悪化しないようにしないといけないんだから。
「ニャー」
「あっ、待って! 猫ちゃん!!」
「ダーリン! 私、頑張ったよー。褒めて褒めてー!」
「ありがとう。お前のおかげで彼女とゆっくり話ができるよ」
「しゃべる猫……そっか、化け猫の一種か。ねえ、お兄さん。もしかしてその猫ちゃんの飼い主?」
「いや、うちに居候してる家出中の白猫だ」
「そう。で? お兄さんは私に何をするつもりなの? 変なことしようとしたら防犯ブザー鳴らすよ」
「僕は君と話がしたいんだよ」
「ふーん、私のスリーサイズとか知りたいの?」
「それはもう知っている。それより君が何者なのか教えてくれないかな?」
「そんなの私が知りたいよ」
「え?」
「私ね、両親を殺す前と殺した後の記憶がないの。まあ、殺したというか、私の操り人形にしたんだけどね」
「そうか。じゃあ、他人を不幸にするのが好きなのはどうしてなのかな?」
「好きだから好きなんだよ」
「最初からそうだったのかな?」
「多分ね」
「そうか。でも、これ以上被害が出ると僕はどうにかして君を倒さないといけなくなるんだ。だから」
「やめないよ。お兄さんが何を言っても私はこれからも他人を不幸にする。それが私にとっての生きがいだから」
「そうか……。じゃあ、僕と一緒にこの世界を壊そう」
「……え?」




