容姿は人間です
スーパーに置いてある食材はエリート。危険なものは一切ない。それが普通。警戒する必要はない。では、もし、その中に呪われている食材が混ざっていたら……。
「なあ、童子。最近、食中毒になる人多くないか?」
「そうですね」
こいつ、何か知ってるな……。僕は洗い物をしている座敷童子の童子の両手に触れる。
「童子、お前まさか……」
「私は何もしていません」
「本当か?」
「本当です」
「じゃあ、どうしてお前から呪いのにおいがするんだ?」
「犬以上の嗅覚ですね」
「好きでこうなったわけじゃない……。さて、知っていることを全て話してもらおうか」
「犯人は小学生です」
「何? あっ、お前……さては見て見ぬふりをしたな」
「ええ、まあ。私は上から様子を見に行けとしか言われていませんので」
「いやいや、だからって放置しておくのはまずいだろ」
「マーキング済みなので大丈夫です」
「そうなのか。じゃあ、今すぐその子のところに」
「それは難しいです」
「どうしてだ?」
「彼女がとある文字使いの弟子だからです」
「何!? それは本当か?」
「本当です。それに彼女はスーパーやコンビニだけでなく飲食店でも目撃されています。それと私の部下や同僚たちの報告が正しければ彼女は歴代の文字使いたちを一人で倒せるほどの実力者だそうです」
「嘘……だろ……。なんだよ、それ……。その娘、本当に人間なのか?」
「容姿は人間です」
「容姿以外はどうなんだ?」
「すみません。私でもそれ以上のことは分かりません」
「分からない?」
「はい。彼女の正体を知ろうとすると何かにブロックされるので」
「そうか。じゃあ、作戦を立てよう」
「作戦?」
「ああ、そうだ。まあ、確実に成功するかどうかは分からないけどな」
「ないよりマシです。それで? その作戦というのは何なんですか?」
「それはだな……」
*
「ただいま」
「お疲れちゃん。で? どうよ。文字の力で他人を不幸にするの最高だろ?」
「そこまでではないけど、まあ悪くない。でも、ちょっと地味。もっとたくさんの人を不幸にしたい」
「いいねー、お前のそういうところ、俺大好き♡」
「はいはい。で? 次は誰を不幸にする?」
「そうだなー。じゃあ、次は世界中に呪いをばら撒こう」
「待って。その前に始末しないといけないやつらがいる」
「あー、あいつらか。まあ、そいつらは俺がなんとかするからお前はいつも通り他人を不幸にしてきてくれ」
「分かった」
「よし、じゃあ、いつものようにホラー映画見るか!!」
「うん」
「今日は何がいい? 血が出るやつ? それとも一人ずつ何かに消されるやつ?」
「見るだけで呪われそうなやつがいい」
「オッケー! じゃあ、ポップコーン買ってくるー!!」
「いってらっしゃい」
あー、楽しみだなー。こいつに真実を伝えたらどんな顔するんだろう。早く明日にならないかなー。




