出世螺、激怒する
午前八時十二分。出世螺、駿河湾に出現。同時刻、世界中に多数の台風が発生。それらは海のゴミを地上に飛ばした後、海洋生物を台風の目の中に閉じ込めてしまった。
「なあ、出世螺。お前の目的はいったい何なんだ?」
「ボラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ふむふむ、海を掃除した後、人類を抹殺するのか。うーん、それ、龍になって最初にすることか?」
「ボラァ!!」
「まあ、たしかに海にあるゴミはほぼ人工物だから人間が掃除するべきだよな。でも、だからって滅ぼす必要はないと思うぞ」
「ボラァー!」
「え? 人類はこの星を壊し続けてるから一刻も早く駆除すべき? それは地球が決めることだからお前はその時まで寝てていいぞ」
「ボラァ!」
「そういうわけにはいかない、か……。じゃあ、僕は今からお前を伸すよ」
「ボラァー!!」
僕は空中を蹴り、やつの腹に突撃した。
「……ごめんね」
僕がやつの腹を強打するとやつは戦闘不能になった。
「お前のやり方はあまり褒められたものではないけど、お前の意見は正しい。ただ、少しだけ時期尚早だと思うんだ。分かるか?」
「……ボラァ」
「ありがとう。その時までゆっくり休んでいいよ」
「……ボラァー」
やつは光の粒となって海中に沈んでいった。その直後、台風は全て消滅したが地上に飛ばされたゴミはそのままであるため、人類はゴミ拾いをせざるを得なくなった。はぁ……あいつがいればいつでも滅ぼせるな……。今回は一体だけだったけど別の個体がどこかに眠ってるんだよなー。おー、怖い怖い。




