機尋ちゃんと蛇帯ちゃん
あっ、機尋ちゃん(この妖怪は機で織られた布がヘビになったもの)と蛇帯ちゃん(この妖怪は帯がヘビになったもの)だ。今日は暇だからあとをつけてみよう。そういえば、どっちも人の邪心から生まれてるなー。
「ねえ、最近どう?」
「どうって?」
「いや、ほら、私たちが元の姿に戻らないのって私たちの持ち主にまだ私怨や嫉妬心があるからでしょ?」
「ひろちゃんの方はまだマシでしょ。ただのメンヘラ女なんだから」
「そんなことないのー、旦那さんの帰りが遅いと自害しようとするんだから」
「遅いってどれくらい?」
「今日中に帰るってメールがあったら一秒でも過ぎたらそうするよ」
「うわあ……」
「いっちゃんの方はどうなの?」
「あたし? あたしは……多分そろそろ元の姿に戻れるわ」
「そうなの?」
「ええ。あたしの持ち主もうすぐ夫に殺されるから」
「……止めないの?」
「持ち主がそれを望んでいないからできないのよ」
「ふーん、そうなんだ。でも、持ち主が死んだら夫を道連れにするんでしょ?」
「ええ、そうよ」
「そこまでする必要あるの?」
「ヒント、あたしの持ち主は結婚してるのに処女で旦那は仕事がある日ない日に関わらず、ほとんど家に帰ってきません」
「うわあ……なんでそんなやつと結婚したの?」
「二人の両親が決めたものだから二人に拒否権なんてないわよ」
「なるほど。つまり昼間はバリバリ働いて、夜はギシギシいわせてるのが持ち主の夫なわけね」
「そういうこと」
「で? そいつは今、どこの会社で働いてるの?」
「さぁ? でも、いつも部下たちに自分がやりたくない仕事を程よく丸投げしてパソコンでゲームしてるわよ」
「えー、働いてないじゃん」
「まあね。でも、その日にやらないといけないことはその日のうちに終わらせてるから全然働いてないわけじゃないのよ」
「いやいや、自分の仕事は自分でやろうよ」
「そうよねー」
「話は聞かせてもらった。えっと、僕に何かできることないかな?」
「あっ、雅人だー」
「久しぶり。元気だった?」
「うん、元気だよ。で? 僕は何をすればいい?」
「そうね……じゃあ、あたしの持ち主に料理を教えてあげて」
「あー、もしかしてあんまり料理得意じゃないのかな?」
「炭以外何も作れないわ」
「うーん、これは旦那さんに恨まれてもしょうがないんじゃないかなー?」
「一応、料理の勉強はしてるのよ。でも、いつも変なもの入れてダメにしちゃうのよ」
「そうか。分かった。じゃあ、コップに水を入れさせてるところから始めてみるよ」
「さすがにそれくらいは……ごめん、ちょっと不安だからそれでいいわ」
「ひろちゃんはどう?」
「うーん、じゃあ、人をダメにするクッション買ってきて」
「それでどうにかできるのか?」
「いいよー、できるだけ孤独を感じさせないようにしないといけないからー。じゃあ、よろしくー」
「分かった」




