キー!!
監視カメラを調べた結果、今回の事件は屋上のカギの仕業だということが判明した。どうやら最近、付喪神になったカギが人の目を盗んで一人で屋上に行き、鍵を開けて屋上で朝まで遊んでいたらしい。今回はたまたま鍵を閉め忘れたようだが、これからもそうなる可能性がある。これらを知った院長はカギを壊そうとしたがカギに体の動きをロックされてしまった。どうやらこのカギはずっとこの病院にいたいらしい。
「よし、じゃあ、合鍵を作ろう。あと屋上に君専用の家を作ろう。そうすれば君は自由だ」
「キー!」
「けど、また似たような事件が起きたらまずいから花魄ちゃんをこの病院に住まわせよう。そうすれば何か起きても僕の脳に直接通知が来るから。それでいいかな?」
「キー!!」
「よし、じゃあ、院長さんを動けるようにしてあげて」
「キー!」
「今の話、聞こえていましたか?」
「あ、ああ……」
「そうですか。じゃあ、僕はこれで」
「ま、待ってくれ! 君はこんな化け物をここに居座らせるつもりなのか!!」
「無理に追い出そうとすると病院の機能だけでなく医者や患者の動きをロックされます」
「じゃあ、今すぐそいつを処分してくれ!!」
「このカギは患者に悪いものが憑かないようにそのへんの浮遊霊や地縛霊たちを見張ってくれています。もし彼らが手を出そうとすれば動きをロックしてくれます。まあ、要するにこのカギはハエトリグモみたいなものなんですよ」
「し、しかし……」
「院長さん、あなたはこの病院で一番霊たちに見られています。何か心当たりはありませんか?」
「知らんな」
「そうですか。では、このカギの今後については」
「好きにしろ! わしは仕事に戻る!!」
「そうですか。では、僕はこれで」
帰り道。
「あいつ! やばい! あいつ! やばい!」
「花魄ちゃん、あまり大声で言わない方がいいよ。医者は救える命だろうと救えない命だろうと自分にできることを精一杯やり続ける職業だから」
「そうか! けど、あいつ危険! あいつ危険!」
「たしかに危険だけど、まだ何もしてないから大丈夫だよ」
「そうだね! そうだね!」
何もせずに一生を終えられるかな?




