デート
雅人が家に帰ると、座敷童子と夏樹(雅人の実の妹)と白猫が出迎えてくれた。
「ただいまー」
『おかえりなさい!』
え? 何?
今日なんかあったっけ?
「今日はみんなでお出迎えか。というか、なんか嬉しそうだな」
「そりゃそうだよ。明日はお兄ちゃんとデートできるんだから!」
夏樹が嬉しそうにそう言うと、彼は何かに気づいた。
「あっ、ごめん。週末は山羊さんとデートする予定だから、また今度にしてくれないか?」
「はい?」
座敷童子は彼の背中に飛び乗ると、一気によじ登った。
その後、足を交差させて彼の首を絞めた。
「誰ですか? その女は。彼女さんですか? 彼女さんなんですね?」
「ち、違う! 違うよ! バイト先の先輩だよ! ちょっとマナーがなってない客から守ったら、お礼に週末どこかに遊びに行こうっていうことになったんだよ!」
嘘は……ついていないようですね。
「そうですか。では、その方に気があるわけではないのですね?」
「ない! ない! というか、あんなきれいな人と僕が釣り合うわけないよ!」
きれい?
「具体的にどこがきれいなんですか? 胸の形ですか? 顔の形ですか? 目の形ですか?」
「ぜ、全体的にだよ! というか、なんでそんなに怒ってるんだよ!」
はい?
「別に怒ってないです。ただ、そのような方とデートするということを、あなたが私たちに言ってなかったのが気に食わないのです」
「無茶苦茶だ! 僕は悪くない!」
お兄ちゃんが……私の知らない女とデート?
「ねえ、お兄ちゃん。今、その人に連絡できる?」
「え? あー、まあ、できるぞ。連絡先交換したからな」
へえ、交換……したんだ。
私に内緒で。
信じてたのに……。
「ねえ、今その人に連絡してもいい?」
「今はダメだ。多分、もう働いてると思うから……って、痛い! 痛い! 痛い! 童子! それ以上されたら死んじゃうよ!」
私にそのことを言わなかった、あなたが悪いのです。
「大丈夫です。死にはしません。あなたの中に彼女がいる限り」
「は? ちょ、それどういう意味だよ」
あー、もう、うるさいなー。
え? 鬼姫、お前いつから聞いて。
彼の意識と入れ替わった鬼姫は座敷童子を床に叩きつけた。
「あたしの安眠を妨げないでよ。殺すわよ?」
「今のあなたに、それはできません。彼の意識があなたに乗っ取られていない間は……ですけどね」
相変わらず、うざいなー。
「さぁ? それはどうでしょうね」
なんてことを言っていると、白猫が震え始めた。
「も、も、も、もしかして! あなたは!!」
「何? この白猫。しゃべれるの? 面白ーい」
鬼姫が白猫を抱っこすると、白猫は気を失ってしまった。
「え? なんでそうなるのよ。変なの」
鬼姫は白猫が目を覚ますまで、その場に座っていたという。