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さて、明日は何をしようかなー

 猿神さるがみが誘拐した退治屋の娘はとある洞窟の中で眠っていた。猿神は悪漢に襲われそうになっていたから保護したと言っていたが本当だろうか……。まあ、何かされた形跡や隠蔽の力が働いている様子はないからおそらく本当だろう。


「本当かなー? 嘘だったら去勢するよー」


「う、嘘じゃないって! 本当だよー!!」


「なあ、虎姉。それ、他のやつにも言ってるのか?」


「さぁ? どうかなー」


「虎姉、笑顔が怖いよ」


「怖くないよー。よし、じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「待て! おめえたち妖怪だろ! 猿神と一緒にこの場で退治してやる!!」


「退治? あんたにできるの? もし、あんたの持ってる短刀が私に当たったとしても私の蜘蛛たちがあんたをバラバラにして食べちゃうと思うけど」


「な、なら、そっちの非力そうなガキを!!」


「頭蓋骨と背骨、どっちの方が耐久力上なんだろう。誰かで実験してみたいなー」


「う……じゃ、じゃあ、本命の猿神を!!」


「お前には無理だ。やめておけ。なあ? お嬢ちゃん」


「お父さん、猿神様はちょっとエッチだけど、何もしなければ無害だよ。だから、命を無駄にしないで」


「そ、そういうわけにはいかねえ! オラのご先祖様はこいつに襲われそうになったんだ!! だから、生かしておくわけにはいかねえ! 


「なあ、あんたは娘さんの前で死にたいのか? そういう性癖があるんだったら仕方ないけど、勝てない相手に突撃するのは無謀だと思うぞ」


「う……そ、そうだな。よし、じゃあ、今回は見逃してやる。あっ、それから娘を保護してくれてありがとな。お礼は何がいい?」


「この娘が成長したら味見させてくれねえかなー」


「前言撤回! おめえはやっぱりクズだ!!」


「なんだよー、味見ぐらいさせてくれよー」


「ダメだ! おめえに味見なんかさせねえ!」


「へいへい」


 退治屋は娘さんと一緒にその場をあとにした。


「なあ、猿神。本当はあいつのご先祖様を襲ってなんかいないんだろ?」


「さぁな。ずいぶん前のことだから忘れちまったよ。さぁて、昼寝でもするか」


雅人まさと、帰ろう」


「でも……」


「帰ろう」


「うん、分かった。じゃあな、猿神。あんまり派手なことするなよ」


「へいへい」


 そうか。あいつはさっちゃんの子孫か。面影はほとんどなかったけど、魂の色はほぼ同じだったなー。

 太陽が雨雲に隠れ、乾いた大地を雨が潤していく。変わっていくものもあれば変わらないものもある。過去は過去、今は今、未来は未来だと割り切って突き進むも良し、たまにゆっくり昔のことを思い出すのも良し。さて、明日は何をしようかなー。

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