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ごちそうさまー

 居酒屋『飲兵衛』。


「あんたみたいな美人と一緒に飲めて嬉しいよ」


「はいはい。それより、よく人間界に顔を出せたわね」


「人間の寿命は短いからなー、五十年くらいおとなしくしてれば厄介なのはだいたいいなくなってるんだよ。さぁ! 今日は俺の奢りだ! どんどん飲んでくれ!!」


「わーい、やったー、ありがとう」


 あいつ、虎姉(絡新婦じょろうぐも。僕の親戚)を酔わせてお持ち帰りするつもりだな……。まあ、虎姉なら大丈夫だろう。


「うぃー、姉ちゃん酒強いねー」


「あんたもなかなかのものだよ。さてと、じゃあ、そろそろ出よっか」


「俺はまだ飲めるぞー……むにゃむにゃ」


「ちょっとー、お金ちゃんと払ってから寝てよー」


「はいはい、分かった分かった。七百万出ろー」


「私たちこんなに飲んだっけ? まあ、いいや。店員さん、足りなかったら言ってねー」


「えーっと、これの半分くらいで大丈夫です」


「あっ、そうなの? じゃあ、残りは店の備品とかリフォームにでも使って。ごちそうさまー」


「ありがとうございましたー!!」


 さてと……。


雅人まさとー、近くにいるんでしょー? この猿、家まで運ぶの手伝ってー」


「はいよー。いやあ、やっぱり大人は頼りになるなー」


雅人まさとー、この世に大人はいないよー」


「ん? どういうことだ?」


「ほら、生き物ってみんな誰かの子どもでしょ? だから、この世に大人はいないんだよ」


「あー、まあ、そうだな。でも、僕から見たら虎姉は大人だよ」


「そうねー。それよりあんたは誰を選ぶの?」


「何の話だ?」


「数年後、あんたは多分誰かと結婚してる。でも、今のところ誰と結婚するのか決めてない。そうでしょ?」


「決めてるよ、僕のそばにいてほしい人たち全員……それが僕の答えだよ」


「人たち……ね。ねえねえ、それ、私も該当する?」


「その答えはその時が来たら教えてあげるよ」


「そっかー。じゃあ、それまで生きないといけないねー」


「虎姉なら大丈夫だよ」


「そう? それまでに夏樹なつきちゃんに消されたりしてない?」


「……うーん、どうだろう」


「ちょっとー、そこは嘘でも大丈夫だよって言ってよー」


「いやあ、あんまり期待させると調子乗るから」


「もうー! 雅人まさとのいじわるー!!」


「そんなことないよー」

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