猿神
僕が帰宅すると門扉に猿神がいた。僕はその時点でこいつが嫁探しまたは生け贄探しをしていることに気づいた。
「一目惚れか?」
僕が猿神にそう訊ねるとやつは鼻の下を伸ばしながら体をくねらせた。
「えー? うーん、まあ、そうだなー。えへ、えへ、えへへへへへ」
気持ち悪さが限界突破してるな。
「で? 誰に惚れたんだ?」
「えーっと、二口女と鬼女と座敷童子と妖狐と絡新婦だ」
「多くないか?」
「嫁は何人いてもいいんだよ! あー、早くデートしたいなー」
「やめておけ。デートする前に殺されるぞ」
「彼女たちはそんなことしない! ついでにトイレにも行かない!!」
こいつは女性をなんだと思ってるんだ?
「あー、一度でいいからデートしたいなー」
「デートして、そのあとはどうする?」
「うーん、自室にお持ち帰りする!!」
「はい、アウト」
「えー」
「えー、じゃない。ということで、今日はもう帰ってくれ」
「やだ! デートしたい!!」
「子どもか!!」
「デートしたい! デートしたい! デートしたい!」
諦めが悪いな……。
「はぁ……しょうがないな。一応話はしてみるけど、あまり期待するなよ」
「わーい! やったー! よろしく頼むぞ! 星の王!」
「え? あ、ああ」
知られたくないやつにも知られてるのか……。




