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呪いのルビーの例の機能

 呪いのルビーを盗んだのは少し前に殺しの技術を盗まれた殺し屋の娘だった。


「星の王! お前さえ……お前さえいなければ父さんは生涯現役でいられたんだ! それなのにお前は! 父さんから命より大切なものを奪った!! 全部……全部お前のせいだ!!」


 銃口をこちらに向けながら少女は僕を睨みつける。


「小娘、星の王は悪くない。あの日、殺しの技術を盗んだのはこの私、宇宙怪盗ロイヤルミスティーなのだから」


「……はぁ? お前、何言って……」


「知らないのか? 私が何かを盗む時は姿がぼやけて見えるように設定してあるんだ」


「そ、それがどうした! どうせ星の王がそうするようお前に命令したんだろ!!」


「ああ、そうだ。だが、あの時僕はミスティーに命を盗めと命令することもできた」


「そうだな。しかーし! 星の王はそれをしなかった! 小娘、なぜだか分かるか?」


「そんなの分かんない……分かんないよー!!」


 夜の廃工場に銃声が鳴り響く。しかし、銃弾は僕ではなく屋根を貫通していた。


「な、なんで? どうして?」


「君が僕を狙って撃ったからだよ」


「何、言ってるの? ちゃんと狙わないと弾は当たらないでしょ?」


「普通はな。さてと、じゃあ、あの日僕が君のお父さんの命を奪わなかった理由を話しておくか」


「こ、来ないで!!」


「撃ちたいのなら何発でも撃っていいよ。それより僕の話を聞いてくれ」


「だ、黙れー!!」


 弾が何発か放たれるが、全て僕から逃げるように僕の周囲を通過した。


「考えなしに撃ってるとすぐ弾切れになるよ」


「う、うるさい! あ、あれ? 嘘? もう弾切れ?」


「ほらね。じゃあ、僕の話を聞いてもらおうか」


「く、来るな! 私はお前の話なんか聞きたくない!!」


「僕はね、できるだけ死者を出したくないんだよ。誰かの死がきっかけで誰かを殺すようなことになってほしくないんだよ。でも、殺さなくてもそうなるケースがあるみたいだね」


「ああ、そうだよ! さぁ、とっとと死ね!!」


「その前に呪いのルビーを返してくれ」


「言われなくても返してやるよ! くらえ! これが星の王を殺せる呪いがかけられたルビーの力だー!!」


「へえ、そうなんだ。でも、それ、呪いなんかかけられてないよ」


「……ふぇ?」


「いや、まあ、それを女性が三日間持ってると全身の血を吸う機能はあるけど」


「え? 嘘! やだ! 私まだ死にたくない! お願い! 星の王! 私を助けて!!」


「なあ、小娘。お前にその権利があると思うか?」


「うん、いいよ」


「え? いいの?」


「うん。さぁ、早くそれをこっちに」


「う、うん」


「星の王よ、お前は甘い、甘すぎるぞ。普通、自分を殺しに来たやつの命を救うか?」


「僕ならそうするよ」


「あー、そうだったな、お前はそういうやつだったな」


「よし、あとはこれを豪邸の主に返すだけだな」


「あ、あのー」


「ん? なんだ?」


「わ、私はこれからどうなるんでしょうか?」


「うーん、まあ、警察に引き渡すしかないだろうなー」


「で、ですよねー」


「でも、まあ、今回の事件は僕のせいで起こったようなものだからそのへんの悪霊のせいにしておくよ」


「え? じゃあ、私は」


「ただし、君は死ぬまで監視対象だ。いいね?」


「あ、ありがとうございます! 私、これからは真人間になります! では!!」


「おう、気をつけて帰れよー。さてと、とりあえずそのへんの悪霊を捕まえて、それから……」


 こうしてこの事件は解決した。しかし、後日呪いのルビーが豪邸の主を例の機能で殺しかけたため、豪邸の主が死ぬまで僕の家で預かることになった。どうやら僕は呪いのルビーに気に入られてしまったらしい。

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