来訪 巨大な隕石と小さな命
僕がドリーム組の『背丈 蟻』と力比べをしていると巨大な隕石が学校めがけて落ちてきた。あれ? この隕石、いきなり空中に現れたな……。
「ごめん、ちょっとトイレ」
「ん? ああ、分かった」
隕石の中に生体反応があるな……。ガ〇ダマモンスターじゃなければいいのだが……。僕が屋上に行くと先客がいた。
「ねえ、お兄ちゃん。アレどうする?」
「夏樹か。何しに来た?」
「もちろんアレをなんとかしに来たんだよ」
「そうか。じゃあ、一緒にアレをなんとかするか」
「うん!!」
とりあえず文字の力で『静止』させよう。よし、できた。あとは文字の力で『縮小』させてっと……。
「これで良し。夏樹、お前の髪でアレを回収してくれ」
「はーい!」
夏樹(僕の実の妹)の黒い長髪には能力や衝撃を無効化する力がある。もしアレが触れた瞬間、爆発する仕様になっていても夏樹の髪ならそれを無効化できる。
「回収完了! うーん、これ結構重いね」
「そうなのか。まあ、この町を消し飛ばせるくらいデカかった
からなー」
「だねー。はい、どうぞ。結構重いから落とさないようにしてね」
「ああ」
命の鼓動を感じる。けど、まだ生まれる気配はないな。
「ありがとう、夏樹。お前のおかげでどうにかなったよ」
「どういたしまして」
「こらー! 私との勝負を放棄するつもりかー!!」
あー、そういえば、背丈さんと力比べしてたなー。
「違うよ、ちょっとこの町を救ってただけだよ」
「何? というか、お前が手に持ってるのはなんだ?」
「この町を消し飛ばそうとした隕石……を小さくしたものだよ。まあ、小さくしても結構重いからねー、君には持てないかもしれないねー」
「そんなの余裕だ! 貸せ!!」
「はいはい」
「うっ……!」
「大丈夫か? 腕震えてるぞ?」
「こ、根性ー!!」
「おー! すごいすごい! 約十キロを軽々と持ち上げるなんてすごいじゃないか!!」
「ふ、ふふふ、これくらい余裕だ」
「そうかそうかー。じゃあ、次は……」
力比べの決着はつかなかったが、背丈さんは力比べをしてくれたことに感謝していた。どうやら彼女が飽きる前にみんな途中で飽きていたらしく、僕ならなんだかんだ最後まで付き合ってくれそうだと思い、果たし状を出したらしい。それならそうと最初から言ってくれればよかったのだが……まあ、背丈がアリサイズだから言っても幻聴だと思われてしまうだろうな。
「この隕石、どうしよう。うーん、とりあえず孵化するまで僕の部屋に置いておくか」
トクンと隕石が僕の手の平の中で脈打つ。まるでそうしてほしいと返事をしたかのように。




