背丈 蟻
彼女の存在に気づいたのは昼休みになってからだった。ドリーム組の『背丈 蟻』は果たし状の中に隠れており僕が果たし状を読み始めると同時に僕の体内に侵入するつもりだったらしいが僕の呼気で落下してしまった。彼女は空中で軌道を変えてなんとか僕の靴の中に侵入できたが僕に攻撃できる体力が残っていなかったため、学校に着くまで僕の靴で休んでいたらしい。授業にはちゃんと出ていたらしく昼休みになると猛ダッシュで僕の席までやってきて自分が果たし状の送り主だということを僕に伝えた。
「それで? どうやって僕に勝つつもりなんだ?」
「あ、アリは力持ちだ! だから、その、力比べをしよう!」
「分かった。じゃあ、とりあえずシャーペンの芯を持ち上げてみようか」
「ば、バカにするな! これくらい余裕だ! やあ!!」
「おー、すごいすごい。じゃあ、次はシャーペンだな」
「まだまだ余裕だ!」
「じゃあ、次は名前ペンだ」
「余裕! 余裕!」
「そうか。じゃあ、次は消しゴムだ」
「うっ……よ、余裕! 余裕!」
嘘だな。
「おい! お前も早く重たいものを待て!!」
「はいはい。じゃあ、まずは筆箱からだな」
「そ、そんな重いもの持って大丈夫か? 骨折れても知らないぞ?」
あー、そうか。アリ基準だと重いのか。
「大丈夫だよ。ほら」
「す、すごい! あっ、いや、わ、私はもっと重いものを持てるぞ!!」
「そうなのかー。じゃあ、この辞書を持ち上げてもらおうかな」
「うっ……そ、そんなのでいいのか?」
「そうかー、余裕なのかー。じゃあ、ハ〇ー・ポッターの本を何冊か持ってこようかなー」
「待てー! 今から辞書を持ち上げるからそのあと取りに行けー!」
「ああ、分かった」
私は今日死ぬかもしれないな……。だが、今さら無理だとは言えない。あー! もうー! どうにでもなれー!!




