表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/1935

白い蝶

 雅人まさとが眠った後、座敷童子は彼の背中に抱きついた。

 彼のぬくもりを感じたかったからだ。

 彼女は彼より年上だが、座敷童子であるが故に見た目はおさない。胸も小さい。というか、膨らみかけだ。

 まあ、そんな彼女も一応、女の子だ。

 好きな人が近くにいたら、抱きしめたくもなる。

 ずっとそばにいたいとも思う。

 しかし、彼が起きている時に抱きしめてだなんて、言えない。

 だから、こうして彼に気づかれないように彼の背中に抱きついている。

 彼女は今、とても幸せ。

 その証拠に、彼女はニッコリ笑っているよ。

 とっても満足そう。

 猫みたいにスリスリ頬をこすりつけてる。

 可愛いね。可愛すぎるね。

 あれれ? どうしたのかな?

 童子わらこちゃん、そんなことしたら雅人まさとくんが起きちゃうよ。

 彼の首筋にキスしたいの?

 それとも、噛みつきたいの?

 どっちもダメだよ。

 もしも、彼が起きちゃったら言い訳できないよ?

 それでもいいの?

 あっ、やめるんだ。けど、やっぱり何かしたいんだね。

 でも、彼の安眠をさまたげちゃダメだよ。

 それくらい分かるでしょ?

 えっ? 彼に自分のことを意識してほしいの?

 それは彼が起きてる時に伝えるべきだよ。

 まあ、それができたら苦労しないか。

 まったく、恥ずかしがり屋さんだね、君は。というか、意気地なしだね。

 おや? 今度は彼の耳を舐めたいの?

 それ、普通に起きるよ?

 え? 寝ているから大丈夫?

 そんな保証は、どこにもないよ?

 それでも、やりたいの?

 なら、できるだけ音を出さないように優しくゆっくり舐めないといけないね。

 え? そんなことできない?

 それくらいできるようになりなよ。

 ぬいぐるみでキスの練習をしてた時に、ついでにやっていれば良かったのに。

 え? なんで知ってるのかって?

 それは秘密だよ。

 言ったら、君という存在がこの世から消されてしまうかもしれないからね。

 それで? これからどうするの?

 やっぱり彼に何かしたいの?

 なら、彼を抱き枕にすればいいよ。

 そうすれば、夢の中でもきっと彼が出てくるよ。

 絶対ではないけど。

 そう……。じゃあ、今日はもうおやすみ。

 明日……というか、あと六時間以内に起きないといけないんだから。

 彼女はコクリとうなずくと、ゆっくり目を閉じた。

 その直後、窓の外に白いちょうが現れた。

 それは彼女に別れを告げるかのように白い光の粒を撒き散らしながら、月に向かって飛んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ