明晰夢見られるように頑張るよ
『河女』は僕を見るなり取り憑いている男性の体から飛び出た。その後、彼女は夏樹(僕の実の妹)の姿になると夏樹と同じ声色で「お兄ちゃん、だーいすき♡」と言った。僕は彼女の両耳を引っ張った。
「痛い! 痛い! 痛い! お兄ちゃん! なんでこんなことするの!!」
僕は彼女の側頭部を手で掴むと彼女の顔面にずつきをくらわせようとした。
「ごめんなさい! もうしません! だから、許して!!」
僕は彼女にデコピンした後、彼女の頭を優しく撫でた。
「程々にな」
「は、はいー♡」
「え、えっと、もしかしてもう解決したのか?」
宇宙怪盗ロイヤルミスティーが僕にそう訊ねる。
「いや、まだだ。被害者を元に戻さないと依頼は達成できない。おーい、大丈夫かー?」
「ミ○イー、どこだー? 俺はここにいるぞー」
「どのミ○イだ?」
「え? 知らない? ほら、ほぼ貧乳キャラがいない忍者の」
「あー、アレか。うーん、彼女は別次元の存在だからなー。リアルにいられる時間はあまりないんだろう」
「そうか……。いつかまた会いたいな」
「リアルより夢で会った方がいいんじゃないか?」
「なるほど。じゃあ、明晰夢見られるように頑張るよ」
「おう」
「……えーっと、これで解決したのか?」
「まあ、一応」
「そうかー。なんかすぐ解決したな」
「いや、かなり危なかったぞ。河女に声をかけてたら今度は僕が取り憑かれてたから」
「なるほど。で? どんな姿でお前の前に現れたんだ?」
「僕の妹だよ」
「夏樹か……。うーむ、なかなか強敵だなー」
「何の話だ?」
「さぁ? 何の話だろうな。よし、では帰ろう!!」
「ああ」
宇宙怪盗ロイヤルミスティーは鼻歌を歌いながらスキップしている。夕日が眩しい。日が沈む前に家に帰ろう。




