河女
青森県には『河女』という妖怪がいる。姿は人間の女性のようでかなりの美人らしい。彼女はとある橋の土手に現れ、橋を通る男に声をかける。その声に応じた男は河女に取り憑かれ、急に大食漢となる。それだけならいいのだが自分の排泄物も食べようとするため、できれば取り憑かれたくない妖怪である。
「星の王よ。その依頼、私に任せてもらえないか?」
僕がリビングのソファでハガキを読んでいると宇宙怪盗ロイヤルミスティーはそう言いながら僕のとなりに座った。
「それはアレか? 僕が取り憑かれる可能性があるからか?」
「ああ! そうだ!! 君のハートは私のものだからなー。誰かに盗まれるわけにはいかないのだよ」
「そうか。でも、今回の依頼はちょっと面倒だぞ」
「ん? そうなのか?」
「ああ。ハガキには依頼主の彼氏の精神が日に日におかしくなってるからなんとかして彼を元に戻してほしいと書いてある」
「えーっと、つまり、その河女とやらを彼の体から追い出すだけでなく精神状態を元に戻してほしいということか?」
「まあ、そういうことだ」
「ということは、それはその妖怪を追い出しても元に戻らないということだな」
「それは取り憑かれた男の性癖とか性格とか心の強度次第だなー。すぐに元通りになるやつもいれば、戻らないやつもいる」
「なぜそこまで差が出るのだ?」
「それはな、河女がターゲットの脳内にある理想の女性に近い姿で現れるからだ」
「そこまでする必要あるかなー?」
「そうしないと無視されるからな。さぁ、とっとと依頼を片付けよう」
「ああ!」
「お前も来るのか」
「お前に何かあった時に正気に戻す係がいた方がいいだろう?」
「まあ、そうだな。その時はよろしく頼む」
「ああ!!」
彼女に取り憑かれた男は夜になると河女に会いに行く。この際、彼女の姿は憑かれた男にのみ見える。そしてその男はやがて精神に異常をきたしてしまう。ここまでは分かっているけど彼女を追い出す方法や被害者を元に戻す方法は分からないんだよなー。まあ、なんとかなるだろう。




