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なーつーきー

 雅人まさとが自室に行くと、座敷童子がベッドの上に腰かけていた。


「……えっと……となり、いいか?」


「……ど、どうぞ」


 彼は座敷童子のとなりに座る。

 気まずい空気が充満している。

 こんな時、どんなことをすればいいのだろうか。

 彼がそんなことを考えていると、座敷童子が口を開いた。


「あなたがシスコンだということは知っています。けれど、私のこの気持ちの正体を突き止めるまでは今までのように生きていけそうにありません」


「だから、僕と付き合ってほしい……。そういうことか?」


 彼女は顔を真っ赤にしながら、コクリとうなずいた。


「……そうか。つまり、これは人助けか」


「そ、そうです! ですから、形だけでも私と!」


 彼は彼女を抱きしめる。

 彼女は彼から離れようとする。

 しかし、彼は彼女を離そうとしない。


「それはうそだろ? 本当のことを言ってくれよ」


「ほ、本当の……こと?」


 彼は彼女と目を合わせると、真剣な表情を浮かべた。


「お前の本当の気持ちだよ。玄関で告白してただろ? 月がきれいですねって」


「あ、あれは夏樹なつきさんの指示で……あっ」


 なぜ、そこで夏樹なつきが出てくるんだ?

 夏樹なつきは彼の実の妹である。


「その、今のは……」


「お前、僕より長く生きてるくせに自分の気持ちを相手に伝えるのに他人の助力がないといけないのか?」


 そ、それはいくら何でも言いすぎです!


「こ、こういう気持ちになったのは初めてなんですよ! 仕方ないでしょう!」


「言い訳するな! ちゃんと自分の気持ちを自分の言葉で面と向かって相手に言えなきゃ、何も始まらないだろ!」


 うっ……そ、それはそう……ですけど。


「それで? 結局、お前は僕のことをどう思っているんだ? 好きなのか? 嫌いなのか?」


「そ、それは……」


 目を逸らすな。


童子わらこ。ちゃんと僕の目を見てくれ。怒ったりしないから」


「ほ、本当ですか?」


 ああ、本当だ。


「もちろんだ」


「で、では言いますね」


 やっとか……。


「わ、私は……あ、あなたのことが……す……」


「す?」


 頑張れ。


「す……!」


「す?」


 あと、もう少しだ。


「す、好き……かもしれません」


「……ほほう」


 まあ、まだその時じゃないってことかな。


「それがお前の気持ちか。なるほど。分かった。じゃあ、少しずつでいいから、僕との距離を縮めていこう。ある程度、距離が縮まった時、お前の気持ちが好きかもじゃなくて、好きになったら僕と正式に付き合う。そうじゃなかったら、今まで通りの関係だ。それでいいか?」


「は、はい!」


 彼は彼女から離れると、部屋の扉を勢いよく開けた。


「……あっ」


「なーつーきー。お前、まだ起きてたのかー? 早く寝ないと身長伸びないぞー」


 夏樹なつきと白猫は苦笑しながら、夏樹なつきの部屋に行った。


「ということで、お前も早く……って、当たり前のように僕のベッドを使うなよ」


「きょ、今日はあなたのベッドで寝たい気分なんです!」


 あー、これは毎日使われるパターンだわー。


「そうか。けど、僕も使いたいから、スペースを」


 彼女は彼が最後まで言い終わる前に彼が寝られるスペースを作った。


「ありがとう。じゃあ、おやすみ」


「はい、おやすみなさい」

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