増殖 フジツボー登場
フジツボーはフジツボたちの父であり母である。フジツボを駆除する会やフジツボ食べ隊などからフジツボたちを守ってきたためフジツボたちにとって彼または彼女はなくてはならない存在なのである。しかし、とある美食家に目をつけられフジツボーは追われる身となってしまった。
「うわー、砂浜のゴミすごいなー。流木とか貝殻とか魚の死骸はともかく人工物が結構多いんだよなー。まさかこれもいたずらの神の仕業か?」
「……見つけた」
「ん? なんか今声が聞こえたような……気のせいかな?」
「星の王、助けて……助けて……」
僕の足元に体長十五センチほどのフジツボがいる。少し体が欠損しているから何かに攻撃されたのだろう。
「ん? お前もしかしてフジツボーか?」
「うん」
「そっかー。お前が噂のフジツボーなのか。えっと、とりあえず手当てするか」
「……中に……入れて」
「……え?」
「君の中に入れさせて」
「そうしないといけない理由があるんだな?」
「うん」
「そうか。じゃあ、おいで」
「うん」
僕がフジツボーを体内に入れると金魚に足が生えたような男性が現れた。
「なあ、そこの少年。このへんに手の平サイズのフジツボが来てると思うんだけど、見てないか?」
「見てないな。というか、このへんにはゴミしかないよ」
「そうだなー。あー、腹減った。早くフジツボ食べたいなー」
彼はそう言いながらどこかに行ってしまった。
「フジツボー、もう大丈夫だぞ」
「そっか」
「……えっと、そろそろ体から出てほしいんだけど」
「ごめんなさい。居心地が良すぎるから出たくない」
「僕はこたつでも布団でもないぞー」
「ごめんなさい。今日だけでいいから君の中にいさせて、お願い」
「それ、一生いさせてになったりしないか?」
「……だ、大丈夫」
「おーい今、間があったぞー」
「大丈夫。明日になったら出ていくから」
「そうか。分かった」
次の日の朝……僕の体からフジツボが生えていた。まあ、そうなるよなー。
「おい、フジツボー起きろ。僕の体、フジツボだらけになってるから」
「あっ、ごめんなさい。でも、大丈夫。それ、自分のよだれのせいだから、ただの無性卵だから、別に苗床にしてるわけじゃないから」
「そうかそうか。で? これからどうする? あいつ、きっとまだお前を探してるぞ?」
「うーん、じゃあ、倒す」
「倒す?」
「うん、倒す。自分と君で」
「えっと、断ったらどうなるんだ?」
「一生君の体に棲む」
「分かった。協力するよ。で? どうやって倒す?」
「うーん、じゃあ、こうしよう。まず……」




