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クズとサボテンとミント

 夏樹なつき(僕の実の妹)のやつ、意識だけ飛ばして彼女に警告したのか……。しかも、ほとんど痕跡を残さずに。


「ただいまー」


「おかえり、お兄ちゃん。危なかったね」


「そうだな。でも、お前のおかげで助かったよ、ありがとう」


「どういたしまして。あっ、そうだ。なんかお兄ちゃん宛てに手紙届いてたよ」


「そうか。誰からだ?」


「クズとサボテンとミントの妖精からだよ」


「えーっと、それ、本当に僕宛てなのか? どこかの花屋とか植物園宛てじゃないのか?」


「ううん、お兄ちゃん宛てだよ」


「そうか。えーっと、じゃあ、部屋で読むよ」


「分かった。じゃあ、この手紙お兄ちゃんの机の上に置いておくね」


「おう」


 *


 うーん、今日の晩ごはん何にしようかなー。僕がそんなことを考えながら封筒の封を切ると封筒の中からクズのつるとサボテンのトゲとミントの地下茎が出てきた。僕は瞬時に自分の周囲に結界を張ったが、三種の植物の進撃は止まらなかった。


「な、何これ!? お兄ちゃん! 大丈夫!?」


「今のところ大丈夫だ。それよりこいつら僕以外に危害を加えようとしてないか?」


「大丈夫。というか、お兄ちゃん以外興味ないみたい」


「そうかー。じゃあ、みんなにこのことを伝えておいてくれ」


「分かったー。でも、これ、どうするの? 除草剤でも撒く?」


「うーん、多分あんまり効果ないからこいつらがなんで僕を狙ってるのかいてみるよ」


「分かったー。でも、無茶しないでね」


「おう」


 よし、じゃあ、対話するか。


「なあ、君たちは僕の何が欲しいんだ?」


『か・ら・だ』


 ですよねー。


「君たちは僕の体を手に入れて何をするつもりなんだ?」


『この星を、緑の砂漠に、変える』


「そんなことしたらこの星のほとんどの命が消え失せるぞ?」


『それでいい。これは剪定。必要なこと』


「ダメだ、やりすぎだ、そんなことしなくていい」


『そうか。では、お前の一番大切なものをいただく』


「それもダメだ」


『では、お前の体を寄越せ』


 こいつら命を何だと思ってるんだ?


「できない。別の方法を考えてくれ」


『この世界は美しい。だが、不要なものが多すぎる。故に私たちはそれらを排除する。協力してくれないか?』


「排除はダメだ。共存しよう」


『やらなければやられる』


 おかしい。様子が変だ。僕の声は届いているはずなのにちっとも考えを変えようとしない。


「待て。君たちなんか焦ってないか?」


『……そんなことはない』


「今の間はなんだ? というか、まだ手紙読んでないな。なあ、ゆっくりでいいから読み上げてくれないか?」


『……星の王へ、助けて助けて助けて助けて助けて……』


「もういい。要するにクズとサボテンとミントの妖精が私利私欲のために利用されているんだな?」


『その通りだ』


「そうか。でも、なんでいきなり僕に襲いかかってきたんだ?」


『お前の実力がどれほどのものなのか知りたかった。ただそれだけだ』


「そうか。そういうことだったのか。で? 三人は今どこにいるんだ?」


『地の鮫の中にいる』


「えーっと、地面を泳げる鮫の中にいるってことか?」


『ああ』


「そうか。じゃあ、今から助けに行こうか」


『協力してくれるのか?』


「捕まっている妖精を助け出す。僕が協力するのはそれだけだ。緑の砂漠化計画には協力できない」


『それはやろうと思えばいつでもできる。お前の助けは必要ない』


「さらっと怖いこと言うな。じゃあ、行くか」


『ああ』


 その後、僕は三種の植物の魂と共に捕まっている妖精を助けに向かった。

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