直球来たー!!
あー、雅人の手料理おいしかったー。これから毎日あの料理が食べられるのかー。私は幸せ者だなー。まあ、私人じゃないんだけどね。
「……おい、憑鬼」
「なあに?」
「お前がお兄ちゃんに手を出そうとしたら私はお前を消す」
直球来たー!!
「ねえ、夏樹ちゃん。どうして夏樹ちゃんはそんなに雅人に依存してるの? 正直、気持ち悪いよ」
「私にはお兄ちゃんしかいないからだ」
「は? 男ならそこらじゅうにいるじゃない」
「そうだな。だが、私のお兄ちゃんはこの世に一人しかいない」
「そうだねー。じゃあ、雅人が誰かと結婚したらどうする? 寝取るの? それとも魔女狩りしちゃう?」
「そうなる前に私がお兄ちゃんと結婚する」
家内の廊下に憑鬼(今は雅人の髪の毛入り人形の中にいる)の笑い声が響き渡る。
「ねえ、夏樹ちゃん。それ、実現できると思ってるの?」
「ああ」
「そっか、そっか。じゃあ、私全力で夏樹ちゃんの恋を邪魔するね」
「できるのか? お前に」
「できるよー。私は自分が憑依している器の力を全て制限なしで使えるからー」
「だから、どうした? お前にお兄ちゃんの力を使える権限や資格はないぞ?」
「そ、そんなこと」
「憑鬼。お前の能力は自分より弱いものにしか適用されない……違うか?」
はぁ……もうバレちゃった。
「正解。よく分かったね」
「少し考えれば分かることだ」
「ん? どういうこと?」
「お前は自分の能力の説明をしている時、一度もお兄ちゃんの力を私に使わなかった。もしお前の説明通りなら説明する前にいつでも私に攻撃できたはずだ。だが、お前は何もしなかった。いや、できなかった」
「うわー、会話しながらそんなこと考えてたのかー。すごいなー」
「すごくはない。すごいのは事前にお前が私に接触する可能性があることを教えてくれた私の大好きなお兄ちゃんだ」
「なるほどねー。私は最初から雅人の手の平の上で踊らされていたんだね。いやあ、ホント兄妹ともすごいねー」
「で? どうする? やろうと思えば私はいつでもお前を消せるぞ?」
「え? あー、さっきの夏樹ちゃんの恋を邪魔するっていう話? あれは冗談だよー。鬼姫ちゃんの知り合いには何もしないよー」
「そうか。なら、これからはお兄ちゃんの知り合いにも何もするな。……これでいいか?」
そうそう、私はそれを聞きたかったんだよ。
「うん、それでいいよ。じゃあ、おやすみー」
「おやすみ」
「……終わったか?」
「うん! 終わったよ!! お兄ちゃん♡」
「そうか。で? あいつと仲良くなれそうか?」
「うーん、微妙」
「そうか。まあ、可能性がゼロじゃないだけマシだな」
「ふわぁ……ねえ、お兄ちゃん。早く寝ようよー」
「そうだな。じゃあ、寝るか」
「うん!!」




