服はだけてるぞ
一時間後、不思議な目覚まし時計のアラームが鳴った。その直後、眠っていた人々が目を覚ました。ちなみに夏樹(僕の実の妹)は普通に熟睡していただけだった。
「おっ、やっと起きたか」
「そうみたいですね」
「アミ、もう失くすなよ」
「はい! 肌身離さず持っておきます!!」
「そうしてくれ」
僕がそう言うと夏樹(僕の実の妹)がリビングにやってきた。
「ふわあ……あっ、お兄ちゃん、おはよう」
「おー、おはよう……って、夏樹服はだけてるぞ」
「そうなのー? でも、直すの面倒ー」
「お前な……それくらい自分で直せよ」
「無理ー。お兄ちゃん、直してー」
「しょうがないなー、こっち来い」
「はーい」
うーんと、これはいったい……。
「あ、あのー」
「ん? なんだ?」
「えっと、お二人は兄妹なんですよね?」
「ああ、そうだ。それがどうかしたか?」
「えーっと、なんか距離が近いなーと思いまして」
「僕たちにとってはこれが普通だ」
「そ、そうですか。仲がいいんですね」
「ねえ、お兄ちゃん。いつになったら私と結婚してくれるのー?」
「いつかはするよ、多分」
「いつかかー」
「ん? ちょっと待ってください。お二人は実の兄妹ですよね?」
「そうだが」
「この国では実の兄妹は結婚できないはずですよね?」
「今はな」
「今はって……まさかこの国の法律を変えるつもりですか?」
「うーん、変えることはできるけど、別に変えなくても兄妹でも結婚できる国を作れば問題は解決するんだよなー」
「今サラッとすごいこと言いませんでした!?」
「そうかな? ちなみに妖怪島はもうあるんだけど、あれは僕が作ったものだから正式な国にはできないんだよ」
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください! あなたは島を所有しているんですか?」
「いくつかな」
「いくつか!!」
「いちいち驚くなよ」
「あー、すみません。でも、島を所有してる高校生なんてあまりいませんよ?」
「そうなのか?」
「そうですよ! しかもあなたは自分で作ってるじゃないですか!」
「まあ、そうだな。でも、あんなの積み木と同じだよ」
「積み木って……」
「旦那様ー、姫凛ちゃん見てませんか?」
「うーん、見てないな。でも、多分僕の部屋のベッドの上にいると思うぞ」
「なるほど、いつもの場所ですね。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「……あ、あの」
「ん? なんだ?」
「今の狐っ娘は誰ですか?」
「僕の婚約者候補の一人だ」
「こ、こここ、婚約者候補!?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ、キリンちゃん? とは誰のことですか?」
「僕と凛との間に生まれた娘だ」
「む、娘!? あなたその歳で父親なんですか!?」
「まあな。えーっと、たしか僕の血と凛の霊力を混ぜ合わせたら生まれたような気がするな」
「あなた、完全に人外ですよ。人間にはそんなことできません」
「人間にも似たようなことはできるだろ」
「いや、まあ、そうですけど……」
「お兄ちゃん、おなか空いたー。何か作ってー」
「はいはい。あっ、さっき作ったホットケーキでいいか?」
「うん、いいよー」
「えっと、その、いつか作るんですか? 国」
「この国で結婚できないとなると他の国に行って結婚するか、国を作るしかないな。あっ、地球以外の星に行くのもいいなー。まあ、それをしようとするとテラフォーミングしないといけないけど数分でできるからやろうと思えばできるな」
雅人さん、普通の人間は一人でテラフォーミングできませんよ。
「あ、あのー……」
「ん? なんだ?」
「いつかこの星を見捨てるつもりなんですか?」
「見捨てるつもりはないよ。でも、この星が嫌っている種族がいくつかあるからなー。この星が殲滅命令を出したらとりあえずその種族を滅ぼして様子を見るよ。それでもダメなら」
「もういいです! その先は言わなくても分かります!!」
「そうか。あっ、お前もホットケーキ食べるか?」
「結構です」
「そういえば、お前さっき食べてたな」
「ねえ、お兄ちゃん。歩くの面倒だから私を椅子まで運んでー」
「はいはい」
「いや、それくらい自分でやりましょうよ」
「あっ、そうそう、夏樹は戦闘力だけなら僕と同等かそれ以上だから怒らせない方がいいぞー」
「申し訳ありませんでしたー!!」
「あー、うん。ところでこの妖精、何? まさか、お兄ちゃんの彼女?」
「いや、ただの居候だ」
「そっかー。でも、お兄ちゃんに手を出そうとしたら串焼きにするから覚悟しとけよ」
「は、はい! もちろんです!!」
「よろしい。お兄ちゃん、おんぶしてー」
「はいはい」
こ、殺されるかと思ったー!! もしかしてここにはあんなのがうじゃうじゃいるのかな? いないよね? いないといいなー。
「雅人ー、パトロール終わったわよー。ん? あんた誰?」
「あ、あなたは……!!」
「鬼姫、お前オーラ出しっぱなしになってるぞ」
「あっ、ホントだ。なんか雑魚がたくさんいたから家に帰るまでオーラで全員気絶させてたの忘れてた」
「おいおい、口から泡吹いてるじゃないか。ちゃんと介抱してやれよ」
「はいはい」




