地球拳と黒撃
宇宙のパワーを使って作られた謎の空間で修行した結果、百枚重ねた瓦に指定攻撃ができるようになった。ちなみに瓦が一枚割れると瞬時に新しい瓦が補充されるため、指定攻撃ができるようになるまで修行に集中できる。
「ふぅ……やっと、いつでも指定攻撃できるようになった」
「おめでとうございます。では、これからやり方というか型をあなたの脳にインストールします。あとは自分でアレンジしてください」
「そうか。分かった」
「では、インストールを始めます」
「おう」
これが『地球拳』か。うーん、拳法のことはよく分からないからあとでキョンシー姉妹に色々訊こう。
「地球拳のインストール完了しました」
「もう終わりか。早いな」
「基礎だけなので」
「応用技は教えてくれないのか?」
「まだその時ではありません。というか、基礎を極めてからじゃないと危険です」
「そうか。分かった。よし、じゃあ、少し休憩するか。おーい、夏樹ー、休憩しないかー?」
返事がない。いや、髪だけ反応したな。
「分かったー!!」
うーん、夏樹(僕の実の妹)の雰囲気がいつもと違うな。まさか本当に新技を開発したのか?
「なあ、夏樹。お前、なんかちょっと変わったな」
「それは私だけじゃないよ、お兄ちゃんもだよ」
「そうかー?」
「そうだよ。あっ、そうだ。ねえ、お兄ちゃん。今から新技を見せ合おうよ」
「え? いや、それは少し休憩してからでも良くないか?」
「やだやだ! 今やりたい!! 今やらないとやる気が失せちゃうよー!!」
「しょうがないなー。じゃあ、一回だけだぞ」
「わーい! やったー! じゃあ、私少し離れるね」
「ああ、分かった」
地球拳を夏樹に使うのはちょっと抵抗あるけど、いつか夏樹に使わないといけない時が来るかもしれないからな。一応、実戦を想定して使おう。
「じゃあ、行くよー!! ……『黒撃』」
夏樹……お前、五感を遮断するだけでなく雑念も消したのか。すごいな……そんな状態で戦えるようになったのか。でも、まあ、地球拳はあらゆる場所や状態で使えるから似たようなものか。僕は僕に襲いかかる黒い髪の猛攻を地球拳で受け流した。
「地球拳……防衛の型……『流水』」
「うーん、やっぱりお兄ちゃんには敵わないなー。でも、お互いまだまだ伸びしろあるね!!」
「そうだな」
髪一本の重さが百キロくらいに感じられた……。これでまだ伸びしろあるのか……すごいな、夏樹は。天才が努力するとこうなるのか。
「お兄ちゃん、どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「いや、なんでもないよ。ミクラ、そろそろここから出してくれ」
「分かりました。では、お二人とももう一度私の特製スムージーを飲んでください」
「またか……」
「えー、またアレ飲むのー」
「はい」
「どうしても飲まないとダメか?」
「はい」
「えー、そんなー。なんか別の方法ないのー?」
「今のありません」
「そっかー。じゃあ、仕方ないね」
「そうだな。じゃあ、飲むか」
「うん!!」
「今回は私も飲みます」
「え? お前も飲むのか? 死ぬなよ?」
「毒味はしたので大丈夫です。多分」
「多分ね……。まあ、もし戻ってくれなくても僕がなんとかするよ」
「そうしてもらえると助かります」
「よし、じゃあ、せーので飲むぞ。せーの!!」
ああ、まずい! でも、前よりはおいしく感じるな。どうしてだろう。慣れたのかな?




