それはね……
僕が宇宙のパワーでできている不思議な空間で修行している間、夏樹(僕の実の妹)は新技を開発していた。
「うーん、私はまだ強くなれるのかな? あっ、そういえば私って髪が本体みたいなものだから肉弾戦はあんまり強くないような気がする」
「いやいや、それはないぞ」
私の後頭部にあるもう一つの口がそう言う。
「え? そうなの?」
「あのなー、お前は今のままでも肉体的にも精神的にも相手を壊せるくらい強いんだからもっと他のところを鍛えろよ」
「例えば?」
「え? あー、そうだなー。知力とか道徳心とか身につければいいんじゃないか?」
「何? 私がバカだって言いたいの?」
「いや、そうじゃない。お前に足りないものがあるとしたらそれくらいかなーと思っただけだ」
「そっか。でも、学校の授業についていけてるし、困ってる人がいたら助けるし、喜怒哀楽もあるよ」
「いや、そうじゃない。もっと戦いについての知識を増やしたり、善悪を理解して相手の心の隙をついたりできるようになれっとことだ」
「戦いについての知識かー。うーん、相手が攻撃する前に攻撃すればだいたい勝てるし、善悪は雰囲気で分かるから迷ったり悩んだりしないよ」
「そうか……そうだったな。お前はそういうやつだったな。じゃあ、こうしよう。お前は無駄な動きが多いから最小限の動きで相手を倒せるようになれ」
「それ、私があんたに髪の主導権を一時的に譲渡すればよくない?」
「それだとお前は寝てても勝てるだろ」
「うん」
「はぁ……じゃあ、こうしよう。目を閉じたまま私が指定するところに髪で攻撃しろ」
「それくらいもうできるよ?」
「そうか。じゃあ、他の五感も使えなくしよう。まずは聴覚だ」
「分かった」
万が一、四肢や感覚器を切り落とされても戦えるようにしておいてくれよ。お前が死んだら雅人が世界を滅ぼしかねないのだから。
一時間後……私は五感を全て封じた状態で頭の中に表示される座標に髪で攻撃できるようになった。
二時間後……私は睡眠時や意識を失っていてもそれができるようになった。
三時間後……私は仮死状態でもそれができるようになった。
「す、すごいな……もうこれは一つの技だ」
「そうなの?」
「ああ、そうだ。よし、じゃあ、この技の名前を考えよう」
「それはもう決めてるよ」
「何? そうなのか?」
「うん」
「そうか。じゃあ、聞かせてくれ、この技の名前を」
「それはね……」




