地球拳
下校中。
「なあ、夏樹。なんで今日は僕にくっついて歩いてるんだ? 歩きにくいんだが?」
「お兄ちゃんが包帯女に取られないようにするためだよ」
「そうかー」
「噂通りのブラコンだな。いや、噂以上か」
「うるさい、呪われてるやつは口を開くな」
「おい、夏樹。今のは言い過ぎだぞ」
「構わない。聞き慣れている」
「いや、でも」
「私は呪われてから五感が鋭くなってな、私をいじめようとするやつらの居場所はすぐに分かるんだ。だから、私をいじめようとすると病院送りになるか最悪死ぬ」
「なるほど。やられる前にやってきたんだな」
「ああ」
「でも、そんなこと続けてたらいつか一人になるぞ」
「そうだな。だが、もうすぐそうする必要はなくなる」
「そうだな」
「私が治してあげようか?」
「何? できるのか?」
「うん、できるよー」
「ダメだ。リスクが大きすぎる」
「ん? どういうことだ?」
「夏樹の髪に触れるとあらゆる技や術、攻撃が無力化・無効化されるんだけど、君の場合呪いそのものになってるから多分夏樹の髪に触れただけで死ぬと思う」
「そうか。だが、うまく微調整すれば私は人間に戻れるのだな?」
「あんた、頭大丈夫? それをするってことは抗毒血清がない毒を注射されるのと同じことなのよ?」
「ふむ、では、代謝で毒が抜け切るまで耐えるとしよう」
「バカ! ちゃんと人工呼吸器つけなさいよ!!」
「ああ」
なんか例えが具体的だったな。
「うーん、まあ、要するに人間の体を残したまま呪いだけ分離できればいいわけだな」
「ああ」
「うーん、じゃあ、作るよ」
「ん? 何をだ?」
「いつになるかは分からないけど、そういう技を僕が作るよ」
「つまり、コ○ミューム光線のようなものを作るということか?」
なんでその技知ってるんだよ……。
「うーん、まあ、そうだな」
「そうか。では、完成したら教えてくれ。狼煙、モールス信号、信号弾……とにかくなんでもいいぞ」
「お、おう、分かった」
「では、さらばだ!!」
彼女はそう言うと屋根の上に上がり、軽やかなジャンプをしながら去っていった。
「ねえ、お兄ちゃん。そんな技、できるの?」
「いや、まあ、文字の力を使えばなんとかできると思うんだよ。でも、あれは効果を持続させるのに必要な霊力が結構いるからやっぱりゼロから作った方がいいと思うんだよなー。あー、でも、やっぱり型というか基礎みたいなものがあった方がすぐできるよなー」
「ついに私の知識が役に立つ時が来たようですね」
「お、お前は! ミラクルクラゲの!!」
「ミクラだ!!」
「はい、ミクラです。ということで、今からあなたに『万物分離拳』を継承します」
「えーっと、僕は北○神拳継承者にでもなるのかな?」
「いえ、違います。拳法は拳法でも『地球拳』です」
「ち、地球拳かー」
「いいね! すごくかっこいい!!」
夏樹(僕の実の妹)は目をキラキラ輝かせている。
「いや、待て。なんでそれを星の王の戦いの時に……いや、ダメだな」
「そうですね。もし、それを使っていたら必ず対策されます」
「だよなー。よし、じゃあ、さっそくその『地球拳』とやらを教えてくれ」
「では、まずこの特製スムージーを飲んでください」
「うわー、苦そう……」
「お兄ちゃん! 私も一緒に飲むから頑張ろう!!」
「夏樹……。よし、分かった。飲むよ」
「美しい兄妹の絆は好きです。では、お二人とも一気に飲み干してください」
「分かった」
「オッケー!」
「では、せーので飲んでください。せーのっ!!」
「……っ!!」
僕たちがそれを飲むと宇宙空間にいた。こ、これはいったい?




