呪いを食べ続ける少女
私が小学三年生の時、私は呪われた。原因はおそらく、こっくりさんをやったからだ。私の様子がおかしいことに気づいた両親は知り合いの呪医に私を診せた。しかし、その呪医は藪医者……いや、藪呪医だったため私の呪いは消えるどころか呪いを定期的に食べなければ生きていけない体になってしまった。そのことに気づいた両親は再び私を藪呪医がいる病院に連れていったが、そこにあったのは藪呪医の遺体だった。どうやらその藪呪医は呪いの研究をしていたらしく、そこで飼っていた人たちに殺されたようだ。そう、やつは自分が呪った人たちに殺されたのだ。その時の私は「そうか、これが自業自得というやつか」と思った。それと脱走した人たちは私が高校生になるまでに全員食べた。やつらからは死んだ藪呪医のにおいがしていたからすぐに分かった。ありがとう、藪呪医。お前の血肉のおかげで私は今日まで生きながらえているよ。だが、最近自分が人間なのか呪いなのか分からなくなる時がある。このままではいつかドリーム組のみんなを傷つけてしまうかもしれない。そうだ、たしかこの学校にはボランティア部みたいなやつがあったはずだ。そこの部員に訊けばなんとかしてくれるかもしれない。
「……で? なんで僕がその娘と話さないといけないんだ?」
「みんな忙しいからだよ」
「それじゃあ、まるで僕が暇みたいじゃないか」
「え? 暇じゃないの?」
「いや、暇だけど」
「じゃあ、いいじゃん。それじゃあ、あとよろしくー!」
「あっ! こら! 待て! 羅々!! お前、絶対その娘がドリーム組だから僕になすりつけたろ!!」
「だーいせーいかーい」
「マジかよー!!」
はぁ……逃げられた。
「そうか。やはりドリーム組と関わりたくないのか」
「いや、別にそういうわけじゃ……。ん? もしかして君が」
「ああ、呪いを解いてほしい者だ」
「そうか。というか、全員に包帯巻いてるのか。着替える時、大変じゃないか?」
「包帯は呪いが勝手に巻いてくれるからそうでもない」
「そうか。えっと、じゃあ、詳しい話は部室の中で聞くよ」
「分かった」
二十分後。
「だいたいの事情は分かった」
「そうか。で? 私の呪いは解けるのか?」
「単刀直入に言うと……解けない、というか解いちゃいけない」
「そうか……」
「まあ、方法がないわけではないけど、オススメはしないな」
「何? あるのか?」
「あるっちゃある。けど」
「けど?」
「呪いを解いた瞬間、君は死ぬかもしれない」
「何? それはどういうことだ?」
「呪われている期間が長いと人じゃなくて呪いに近い存在になっちゃうから呪いを解いた瞬間、絶命する可能性があるんだよ」
「そ、そうか。では、私は人間に戻れないのか」
「普通はな。でも、僕なら君の体を呪われる前の状態に戻すことができる」
「何! それは本当か!!」
「ああ。でも」
「でも? なんだ?」
「その……容姿が小学三年生になっちゃうんだよ」
「あー、そうか。まあ、そうだな。うーむ……」
「まあ、すぐに決める必要はないからじっくり考えてくれ」
「分かった」
「じゃあ、僕はもう帰るから」
「待て。一緒に帰らないか?」
「え? あー、まあ、別にいいけど」
「そうか。分かった。では、一緒に帰ろう」
「お、おう」




