セイクリッドグロリアスフィニッシュ!!
アリシア・ブラッドドレインはいったい何がしたいんだろう。自分に不利な結界を展開した後、観客たちの士気を高めて乱戦状態にしたのはなぜだろう。
「いいぞ! もっとだ! もっと血を流せ! やつを召喚するにはもっとお前たちの血が必要だ!!」
そうか、そういうことか。今のでお前が何をしたいのかやっと分かったよ。
「アン、僕を鎧の外に出してくれ」
「ダメ。外は危険」
「頼む、あいつと話がしたいんだ」
「……ダメ」
「お願いだ、アン。早くしないとアリシアが」
「今はダメ。まずは雑魚を片付けないと」
「ありがとう! アン!!」
「ど、どういたしまして」
どうしよう。今すぐ雅人をお持ち帰りしたい。
「アン! 前!!」
「ていっ!! ふぅ……危なかった。ありがとう、雅人。助かった」
「どういたしまして。でも、このまま乱戦状態が続くのはまずい。なあ、『セイクリッドハンター』に相手を気絶させる能力とかないのか?」
「ある。けど……」
「けど?」
「下級吸血鬼にそれを使うと一生目を覚まさない可能性がある」
「微調整は僕がやるから大丈夫だよ」
「そう。じゃあ、それでいこう」
「分かった。よし、じゃあ、やるぞ! アン!!」
「うん!! 『ストップミスト』発動!!」
「微調整開始!!」
それにより雑魚は全員気絶した。
「ちっ! 余計なことを……。だが! 召喚に必要な血は集まった!! いでよ! 我が半身! ブラッディードラゴン!!」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
うわあ……全身赤黒い……。それにすっごく血生臭い……。
「はーっはっはっはっは! これでようやくあのお方の一部になれるぞー!! 残念だったな! 雑魚共!!」
「アン、僕をアリシアのところまで投げてくれ」
「分かった。気をつけてね」
「ああ」
僕が鎧の外に出るとアンは僕で砲丸投げをした。
「いっ……けー!!」
「アリシアー!!」
「待っていたぞ! 雅人!! さぁ! 今こそ我と命のやり取りを!!」
僕はブラッディードラゴンの頭上付近を飛んでいるアリシア・ブラッドドレインに抱きしめるとブラッディードラゴンを霊力で作った鎖で拘束した。
「アン!! 僕ごとアリシアを殺せー!!」
「なっ……!!」
分かった。セイクリッドハンター……対吸血鬼用特殊光線のチャージを始めて。
いいのか? あの小僧、気に入ってるんだろ?
そうだよ。本当はこんなことしたくないよ。でも、彼の望みを叶えられるのは私しかいないの。だから、お願い。私に力を貸して、セイクリッドハンター。
分かった。そんじゃあ、チャージ開始するぞ。
うん、お願い。
チャージ開始。チャージ完了まで約三分。
「お、お前、正気か!? そんなことしたらお前も!!」
「おいおい、命のやり取りをしたいんじゃなかったのか?」
「バカ者! あれは一対一でという意味だ!!」
「分かってるよ。でも、僕にはこれしかできないんだ」
「ふん、バカなやつだ。だが、お前はそういうやつだからな。仕方ない」
「分かってるじゃないか」
「当然だ。我を誰だと思っている? 上級吸血鬼、アリシア・ブラッドドレインだぞ?」
「そう、だな。そうだったな。なあ、アリシア」
「ん? なんだ?」
「そろそろ僕をどうにかできる存在を増やしておきたいんだ。だから」
「最後まで言わなくていい。今、お前がすべきことは何があっても我を離さないことだ」
「そうか。そうだな。じゃあ、そうさせてもらうよ」
「うむ」
「チャージ完了! さぁ、撃て! アン!!」
「分かった」
ありがとう、雅人。またね。
「『セイクリッドグロリアスフィニッシュ』!!」
はぁ……もう少しで一人で死ねたのに死ねなくなってしまったではないか。だが、まあ、そのおかげで最強の眷属を手に入れられるのだから良しとしよう。
「……排除完了」
「バトル終了。勝者……」
このメイド、今まで私の鎧の影の中に隠れていたのか。
「司会進行代理のメイドさん、私は勝者じゃないよ。私はただ生き残っただけだよ」
「なるほど。では、生存者のブラッドキラー様。こちらへどうぞ。あのお方がお待ちです」
「分かった」
「……よし、行ったな。では、お前の血吸わせてもらうぞ。雅人」
ごめんな、アリシア。僕の血を飲ませてしまって。




