そ、それは……
雅人と座敷童子は今、リビングの床で正座をしている。
二人が家中、駆け回ったせいで埃が巻き上がった。それに怒った夏樹が二人に反省するよう言い渡した。
そもそも、こうなったのは座敷童子が僕から逃げたからだ。
だから、僕は悪くない……なんてことは、微塵も思っていない。
僕もやけになって、お前を追いかけ回した。
だから、こうなった。けど、僕はお前のことが心配で。
「……すみませんでした」
「え?」
なんで謝ったんだ?
「私があなたとちゃんと話していれば、こんなことにはなりませんでした」
「それはまあ、そうだけど。僕もお前をしつこく追い回したからな、童子だけのせいじゃないよ」
あれ? こいつ、面と向かってじゃなかったら、ちゃんと僕と話せてるぞ。どうしてだ?
「あなたは私と話している時、どんなことを考えていますか?」
「え? あー、そうだな。無理してないかなーとか、いつも突然現れるのはどうしてかなーとかかな」
なんだよ、急に。
「そうですか。では、私がおかしいんですね」
「ん? それはどういう意味だ?」
なんか気になるな。
「な、なんでもありません! 今のは忘れてください!」
「いや、そう言われると余計に気になるんだけど」
普通に気になる。
「本当になんでもありません! なので、もうこの話は終わりです!」
「まあまあ、そう言うなよ。なあ、童子ー」
彼女が彼と目を合わせないようにしていると白猫がやってきた。
「ダーリン。あんまりしつこくすると、嫌われるわよ」
「そ、そうか。そう、だよな。ごめんな、童子」
彼女は彼に背を向けたまま、コクリと頷いた。
「まあ、その……なんだ。お前が話したくなったら話してくれ」
「分かりました……そうします」
な、なんか気まずいなー。
おっ、そろそろバイトの時間だな。
「あのー、夏樹さん。そろそろ、バイトに行きたいのですが……」
夏樹(雅人の実の妹)はソファに横になっている。
「あのー、夏樹さーん。起きてますかー?」
「……ふぇ? あー、起きてるよ。えーっと、何だっけ?」
聞いてなかったのか。
「えっとだな、そろそろバイトに行かないといけないから……」
「あー、うん、分かった。いってらっしゃい」
即答かよ。
「お、おう。じゃあ、いってきます」
「はーい、いってらっしゃい。気をつけてねー」
彼がその場からいなくなると、夏樹と白猫は座敷童子の元に集った。
「ねえねえ、童子ちゃん。どうしてお兄ちゃんとまともに話せなくなっちゃったのー?」
「あっ、私もそれ気になるー」
そ、それは……。