見たこともないゲーム
月の女王は見たこともないゲームで遊んでいる。
「なあ、そのゲーム、どこで売ってるんだ? ボタン一つ押すだけで敵のロボットに三十回くらい攻撃してるけど」
「私が作った」
「作った? でも、この部屋にプログラムの本一冊もないぞ?」
「地球の王、覚えておいてゲームに必要なのは想像力と創造力だよ」
「想像力と創造力?」
「うん」
「その二つがあれば誰でも自分の理想のゲームができるのか?」
「できるけど、酒やらタバコやらで松果体がカッチカチになってる人類には無理だよ。あっ、でも、星の王は無条件でできるよ。こっち来て」
「え? あ、ああ」
彼女は僕の額に手を当てると僕にゲームの作り方を教えてくれた。
「はい、おしまい。じゃあ、試しにいつも笑ってるスライムが主人公のゲームの続編を作ってみて」
「あー、アレかー。じゃあ、舞台を地下にしてみようかな」
「いいね。じゃあ、作ってみて」
「お、おう」
テール団に襲撃された主人公たちは村の守り神を復活させ、反撃しようと試みるが敵も村の守り神を狙っていることを知る。主人公たちは守り神を復活させるのに必要なパーツや武器を集めながら敵の戦力を削っていく。物語終盤、テール団のボスに全てのパーツと武器を奪われてしまい、村の守り神が悪に染まった状態で復活してしまう。村の守り神の力は強大でテール団のボスでも制御できない。主人公たちはそのへんにいたドジな敵兵二人を倒し、彼らが乗っていたロボットを奪取すると地下で集めた素材で武器や弾薬を作り、ロボットを強化・改修すると村の守り神を少しずつ確実に追い詰めていくのであった。
「こんな感じかな」
「初めてにしてはいい出来だね。遊んでみてもいい?」
「え? 今から遊ぶのか?」
「うん。ダメ?」
「いや、別にダメじゃないけど」
「そっか。じゃあ、始めるね。おー! タイトルのロゴにさっそく伏線が!!」
「伏線というかネタバレだよ」
「気づけない人にはただの小物にしか見えないから伏線でいいんだよ」
「そ、そうなのかなー」
「そうだよ。えーっと、名前は……ムーンにしよう。ん? これ、最初にくんとかちゃんとか設定できるの?」
「あとからでも変えられるぞ。あとキャラごとにもそれぞれ設定できるぞ」
「なるほどー」
月の女王はゲームが少し進行する度にリアクションしている。そんなに面白いかなー? このゲーム。
「ねえ、ここのギミックどうやったらクリアできるの?」
「あー、そこは……」
「待って! 答えは多分このエリア内にあるから自力で探してみる」
「おう、頑張れ」
答えはすぐそばにあるよ。というか、いるよ。
「あー! 主人公の妹に話しかけたらヒント教えてくれたー! というか、この妹かわいすぎない? このゲーム終わったらこの娘の抱き枕カバー作っていい?」
「いいけど、売るなよ?」
「売らないよ。でも、このゲーム発売されたら売るよ」
「発売は難しいと思うぞ」
「私の名前出せば大丈夫だよ」
「え? 君、そんなに有名なのか?」
「私が関わった作品は全部ヒットしてるからねー。私はこの界隈では神様みたいなものだよ」
「そ、そうか。あっ、そこ、トラップあるよ」
「引っかかる前に言ってー! いや、でも、ネタバレされるよりかはいいか!」
「お、おう」
月の女王は何度もピンチになったが、なんとか切り抜けていった。
「いよいよラスボス戦かー。楽しみだなー」
「ちゃんとセーブしたか?」
「あっ、まだしてなかった。ありがと」
「どういたしまして」
「さてと……じゃあ、行きますかー!」




