冥府へようこそ
夕方……公園……。
「そうか、君は海王星の女王なんだね」
「まあ、一応」
「そうかー。いやあ、それにしてもすごい幻術だったなー。水族館に行っただけであのレベルなら深海とか見せたらもっとすごいのできそうだなー」
「褒めても何も出ませんよー」
『あははははは!!』
「えーっと、これで太陽系の惑星全て制覇したことになるんですかね?」
「いや、まだ一つ残ってるよ」
「え? いやいや、もう惑星はないですよ」
「いや、あるよ。元、惑星が」
「あー、そういえば、ありましたねー。惑星もどきが」
「惑星もどきって言うな!!」
「うわっ! びっくりしたー! えーっと、あなたは?」
「私は冥王星の女王。私を準惑星にしたこの星を滅ぼしに来た」
「えー!? そんなことで星を滅ぼすんですかー!?」
「そんなことだと? 海王星の女王! ついでにお前の星も滅ぼしてやろうか!!」
「ごめんなさい、さっきのはなかったことにしてください」
「よし、じゃあ、私の部下になれ」
「部下? 私があなたの部下? あははははは!」
「何がおかしい!!」
「いや、だってここにいる最弱に負けた私を部下にするってことは冥王星の女王は私に勝った最弱より弱いってことになるじゃないですかー」
「何? 最弱が海王星の女王に勝ったのか?」
「まあ、一応」
「そうか。だが、他の惑星はまだだろう?」
「いや、順番通りに来てくれたから君を倒せば全惑星制覇できるよ」
「……お前、今なんと言った?」
「え? 順番通りに」
「そのあとだ」
「え? あー、えーっと、君を倒せば全惑星制覇できるよ」
「そこだ。お前は私を惑星扱いしてくれるのか?」
「まあな。というか、自分が惑星だと思うのなら惑星でいいんじゃないかなー?」
「……!! お前、名はなんというのだ?」
「『山本 雅人』だ」
「そうか、雅人か。なあ、雅人。私と共にこの星を滅ぼさないか?」
「ん? なんでそうなるんだ?」
「この星は私を準惑星にした。故に滅ぼす。だが、お前は私を惑星扱いしてくれる。だから、お前だけは助けてやる。どうだ? 悪い話ではないだろう?」
「うーん、僕一応地球の星の王だからこの星を守らないといけないんだよ。というわけで、悪いんだけど僕のことは諦めてくれ」
「……そうか。ならば、死ね。『冥府へようこそ』」
「うっ!」
「あれ? 雅人さん? 大丈夫ですか? ちょっとー」
「それは抜け殻だ。故に何を言ってもやつには届かない」
「そ、そんな! そんなことより冥王星の女王! あなた、もしかして彼のこと独り占めしようとしてます?」
「だったらどうする?」
「雅人さんの親族にこのことを報告します!」
「好きにしろ」
「わっかりましたー!」
私は大きく息を吸うと大声でこう叫んだ。
「雅人さんが冥府に連れていかれましたー!」
「バカめ、その程度の声量では親族には届か」
「届いてるよ」
「届いてるわよー」
「な、なんだ! お前たちは! 私に何の用だ!!」
「お兄ちゃんを……返せ!!」
「早く雅人を返して。じゃないとあなた今日ここで死ぬわよ」
そうか、こいつらやつの親族か。
「ダメだ、やつは私のものだ」
「そうか……なら、今日ここでお前を殺す」
「おー、怖い怖い。でもー、大事な息子をあなたなんかに渡すわけにはいかないわ。だから……あなた今日ここで死になさい」
な、何なんだ? こいつら。隙がどこにもない!!
「わ、私を殺せるのは私だけだー!!」
その直後、私は走馬灯を見始めた。




